第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
出来上がった朝食をお椀によそっていると
「凄ぇいい匂いがすんだけど」
「天元さんも食べる?かきたまうどん」
スープの匂いに釣られてきたのか、天元さんが寝室からのっそりと出てきた。天元さんは私の問いかけにじーっとかきたまうどんを見つめた後
「…食う」
そう一言だけ言った。
「よかった。思ったよりたくさん出来ちゃって、一人じゃ食べきれないなって思ってたの。天元さんの分もよそって持っていくから、ソファーで待ってて下さい」
「わかった。箸、持ってっとく」
「ありがとうございます」
「つぅかお前、すずね、敬語、気持ち悪ぃからやめろっつったろ」
「あ…すみません…つい癖で」
「謝る必要ねぇって。それよりうどん食いたい。早く持ってきて」
天元さんはテーブルにお箸を置きながら、私の事を急かすようにそう言った。
「はいはいわかりました」
そんな様子を可愛いと思ってしまう私は、もう完全に天元さんに恋心を掴まれてしまっていた。
「…そろそろ、帰りますね」
うどんを食べ終え、片づけをし、身支度を整えた私は
”まだ一緒にいたい”
という気持ちを心の奥にグッと追いやり天元さんにそう告げた。
「はいよ。気を付けて帰れよ」
「…はい」
”アプリじゃない連絡先を教えて欲しい”
そんな言葉が喉元まで出かかっていたのに、断られたらどうしようという気持ちの方が先行してしまい、言うことが出来ずにいた。けれどもきちんとここで言わなければ、こんな関係は瞬く間に終わってしまう。
私は左手に持っているスマートフォンをぎゅっと握りしめ
「天元さん…帰る前に…連絡先、教えてくれませんか?」
天元さんの目をじっと見つめそうお願いした。
「別に、いいけど。…言っとくけど俺、あんまケータイ見ねぇよ?他にも連絡とってる女の子、いっぱいいるし」
「…っそれでもいい!私も自分からそこまで連絡するタイプじゃないし…気が向いたときでいいから…また連絡して…?」
沢山いる女の子の一人で構わない。とにかく私は自分が初めて抱いた、この熱く激しい恋心を手放したくなかった。
「…お前。本当、男見る目ねぇな」
私から目を反らし、天元さんは呟くようにそう言った。