第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
すると
「あんだけでけぇ腹の音出してりゃ誰だって気づくだろうよ」
「…っ!」
天元さんは私の身体から腕を離しながらそう言った。一方私は、天元さんのその言葉に身体をピシリと固めてしまう。そんな私の耳に天元さんは口を寄せてくると
「あんなでけぇ音鳴らしてりゃあ目も覚めるわ。…この食いしん坊」
そう言って
ちゅっ
私の耳のふちに軽いキスを落した。
「……!?!?!?!?」
私はその天元さんの行動に、バッと上半身をベッドから起こし、両手で左耳を抑えながらその顔を目を見開きながら見てしまう。
その時
ぐぅぅぅ
「…っ!」
「ぶはっ!!!」
私のお腹が”もう限界なんですけどぉ”と主張するかのように、再び大きな音を立てた。あまりの恥ずかしさで顔が燃えるんじゃないかと思う程急激に熱くなり、左耳を抑えていた両手を顔に移動し、私は両手で顔を覆うように隠した。
そんな私の行動に天元さんはお腹を抱え楽しそうに笑っている。そんな楽しそうな様子に嬉しさを感じながらも
「…そんなに…笑わなくても……」
やはり恥ずかしさの方が勝ってしまい、私は呟くように小さな声でそう言ってしまう。
「…はぁ……マジで、朝っぱらから笑わせんなよ」
一通り笑い終えたと思われる天元さんはそう言うと
「冷蔵庫。昨日見せた通りまともなもん入ってねえけど、この間鍋した時の残りもんがあるから…勝手になんか作って食っていいぜ。鍋はキッチンの収納にあるから適当に使って。俺はまだここでゴロゴロしてるわ」
私の頭をポンポンと優しく宥めるように触った後、スマートフォンをいじりながら言葉の通りゴロゴロとし始めた。
「…じゃあ、お言葉に甘えて…キッチン借りま…借りるね」
「はいよ」
私は、天元さんと寝転んでいるベッドから出るのを惜しいという気持ちをぐっとこらえながらベッドを降り、寝室を出てキッチンに向かった。
冷蔵庫、冷凍庫、野菜室を順に開けて見ていき
「…あれなら…つくれそう」
少ないながら発見した使える調味料を頭の中で組み合わせ、味に想像を巡らせ
「天元さんも…食べてくれるといいな」
そんな淡い期待感を胸に抱きながら私は朝食作りを開始した。