第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
恥ずかしさとアルコールで熱くなった顔を冷まそうと、私は手で顔をパタパタと仰ぐ。
「あれしか飲んでねぇのに…酔ってんの?」
「…少し…でもまだふわふわする位ですので大丈夫です」
「あっそ。無理すんなよ」
宇髄さんはそう言って私の頭にポンポンと優しく触れた。
…きっと…たくさんの女の子にこうしてるんだろうな。…その中の一人でも良いから…もっと宇髄さんの事…知りたい。
そんなことを考えていると、ふと個展でみた宇髄さんの苦し気な顔を思い出した。
「…聞いてもいいですか?」
「何を?」
「…宇髄さんは、どうして今日、私をあの個展に誘ったんですか?」
私のその質問に、宇髄さんは口に持っていこうとしていたワイングラスの動きをぴたりと止めた。そして私の事をその赤ワインとよく似た色の瞳でじっと伺うように見ると
「何?俺の事、知りてぇの?」
そうニヤリと笑みを浮かべながら言った。でもその笑みは、どうしてか私にはとても不自然なものに見えて、どうにも”踏み込んでくるな”と言っているようにも見えた。
それでも
「…知りたいです」
私は宇髄さんの瞳をじっと見つめながらそう答えた。
「お前、消極的なんだか積極的なんだかよくわかんねぇ女だな」
「そうですか?消極的…かもしれませんが、自分が知りたいと思ったこと…どうしても欲しいと思ったものを手に入れる努力は…惜しまないようにしています」
「…あっそ」
そう言って宇髄さんはグラスに残っていた赤ワインを一気に飲み干し
「そんなに知りてぇなら教えてやるよ」
目を細め、どこか切なげな表情をしながら話し始めた。
「それじゃあ…宇髄さんには、前世の記憶があって…今でも愛している、3人の奥さん達の事をずっと探しているっていうことですか?」
「そ。俺には勿体ねぇくらいのいい嫁達だった。だからこの世でも、また一緒になりてぇってずっと探してた」
「…そうなんですね」
「前世の記憶とかあり得ねぇとか思わねえの?」
宇髄さんは、私のその反応が意外だったのか、若干驚いたような表情をしながら私にそう尋ねてきた。
「…思いません。むしろ、そんな風に、前世から結ばれた愛情…すごく…素敵だって思いました」
…そんなんじゃ、私の入る隙なんてあるわけないけど。