第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
気が付けば太陽はすっかりと傾いており、辺りは夕焼けに包まれていた。
「さて。荷物もすげぇことになっているし、これでお開きにするか。タクシーとめてやるよ」
そう言って道路の方に近づいて行った宇髄さんの服を後ろから掴み
「…まだ一緒にいたいって言ったら…困りますか?」
恥ずかしさで震えそうになる声を抑えながら私はそう宇髄さんに尋ねた。宇髄さんは道路に向かっていた足を止め、私の方にゆっくりと振り返る。
「…なになに?ほっぺ真っ赤にしちゃって、俺の事誘ってんの?」
にやにやと揶揄うような笑みを浮かべながら私の顔に、その端正な顔を近づけてきた。私は宇髄さんから目を反らすことなく
「…誘ってるって言ったら…どうしますか?」
そう答えた。
「…思ったより度胸あんじゃん。いいぜ。俺ん家、来な」
「ほら。入れよ」
ドキドキと早鐘を打つ胸を抑え
「…お邪魔します」
私は宇髄さんの自宅に足を踏み入れた。
…随分と…広いんだな…もしかして、彼女と同棲とかしてたのかな?
そう思い至るのが自然なほどに、連れてこられた宇髄さんの家は広いものだった。廊下を進みリビングについてもやはりとても広く、なのに生活感はあまり感じず、ちらりと目に入ったキッチンも使っている気配を感じないほどに綺麗だった。リビングにある家具といえば、テレビにテレビボード、そして一人で使うには大きすぎるL字型のソファーと、これまた同じく大きすぎるような気がするテーブルだけ。
「ま、適当に座れよ。あと、酒とつまみしかないんだけど、冷蔵庫、勝手に開けていいから好きなの取って。俺はちっと着替えて来るわ」
そう言って宇髄さんはリビングの隣にある部屋へと消えていった。
…こんな風に男の人の家に来るなんて…初めて。どうしよう。緊張で死にそう。…よし。人のお家の冷蔵庫を開けるのはちょっと戸惑うけど、お酒を少し頂いて、緊張を解そう。
私は荷物を邪魔にならない部屋の端に置かせてもらい冷蔵庫へと向かった。