第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
その視線に私が思わず斜め上にある宇髄さんの顔を仰ぎ見ると
「ぶっちゃけその髪型全然似合ってねえ。色も暗えし顔の雰囲気と合ってねぇんだよ」
宇髄さんは私の3:7位にぱっかりと分けてある前髪と、胸辺りまで伸ばしてあるこげ茶色の髪を指先でつまみながらそう言った。
「…そうなんですか?」
「なんでんな似合わねぇだっせぇ地味な髪型してんの?」
「…っ…」
無遠慮なその物言いに思わず言葉につまり固まってしまう。
「いやいや天元さん。女の子に向かってそんな失礼っすよ」
「じゃあお前、髪の毛のプロとしてこいつの髪型みてどうよ」
「全然似合ってねぇっす。見ててむずむずします」
「だろぉ?」
宇髄さんはともかく、美容師である後輩さんがそういうのであれば私のこの髪型が似合わなくてダサいのは間違いなのだろう。
「で、その髪型、なんかこだわりでもあんの?」
ぐるりと私の前に回り、宇髄さんは私の目をじっとのぞき込みながらそう尋ねてくる。
「…元カレが…この髪型が好きだって…言ったので…」
宇髄さんから目を反らし、ぼそぼそとそう答えると
「だと思ったぜ!なら尚のこと切っちまえ!」
そう言って宇髄さんは私の腕を優しく掴み
「そこの席、いいか?」
「…いいっすけど…」
後輩さんの許可を取り、私の事をそこから一番近い席に座らせた。
「すずねの会社、色は暗くねぇと駄目な感じか?」
「いいえ。流石に金髪とかは駄目ですけど…ミルクティー色の子とかいますし」
「よし!じゃあその髪色も変えろ!」
「…でも…私ずっとこの髪型で…これが自分でも一番落ち着くんです…」
いつも同じ髪型で髪色。元カレもそれが似合うと言っていたし、自分でもそうなんだと思っていた。だから急に、髪型、そして髪色まで変えろと言われてもそんな勇気なんてあるはずもなかった。
けれども
「あんなくそだせぇ男の好みの髪型でいるから余計にしみったれた気持ちのまんまなんだよ。アプリで出会い探して無理やり弾けた中身になる前に、もっと自分に似合うよう外見を変えてみろ。手始めにこの派手で男前な俺様に任せてみろ」
宇髄さんは、ニッと自信ありげに笑いながら鏡越しに私の顔を見た。