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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん


「…”まじめで、謙虚で、一生懸命な君が好き”だなんて言ってた癖に…あいつ、私が浮気に気が付いた時なんて言ったと思います?”地味で可愛げのない女なんて要らない”ですって!どの口がそれをいう!って感じですよね」


あの日私へと向けられた2つの視線、見下すような元カレの目と、”私の勝ちよ”と言わんばかりのあの子の視線が今でも忘れられない。


「だから私、もっと軽い、弾けた女になりたかったんです」

「成程。だからこのアプリってわけね」

「その通りです」


マッチングアプリなんてまさかこの人見知りで警戒心の強い私ががお世話になる日が来るなんで思わなかった。それでも悔しくて、惨めで、哀しくて、くそ真面目でつまらない自分を変えるきっかけになればと震える手でアプリをインストールした。


「で、んな性に合わないことして何か変化あったのか?」

「…っ…」


そう言って私をじっと見る宇髄さんの言葉と視線が私の心をズンと重くした。


「……ありません」


ないどころか、全くの偶然ではあるがあの二人に遭遇してしまい、宇髄さんのお陰で助けられたはしたものの、傷口に塩を塗りたくられた気分だった。


「…本当…何してんですかね…私…」


カランっ


音を立ててカフェラテの氷が崩れる。水っぽくなったそのカフェラテはちっとも美味しそうじゃなくて、まるで今の私のようだった。


その時


「この後なんか用事あんのか?」


宇髄さんがなんの脈絡もなしに私にそう尋ねてきた。


「…ありません…けど…」


私がそう戸惑いながら答えると


「よし。じゃあちょっと俺に付き合え」


宇髄さんは椅子から立ち上がり、さっとお会計の伝票を取るとすたすたとレジの方に歩いて行ってしまった。


「…っちょ…待ってください!あ!駄目です駄目です!やっぱりお金は…私が…」


慌てて追いかけるも、私がもたついている間に宇髄さんはさっさとタッチ決済でお会計を済ませてしまう。そして


「はい残念でしたぁ」


そう言いながら私に向けあかんべえをしてきた。


「…っ!?」


良い大人がこんな公共の場であかんべえをするなんて、普通であればあるまじき行為である。それでも、そんなのが気にならないほどに宇髄さんの外見は目を惹くものがあるし、それを証拠に店内にいる女子たちがざわついている。

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