第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
「は?じゃあなに、さっきのくそ野郎、すずねに仕事で負けた腹いせで浮気して、そのうえその浮気相手に乗り換えた挙げ句の果て、あんなクソみたいなこと言ってたのか?」
「そういうことです。数ある企画の中で、私のが1番良かったって、たまたまその会議を見てくれた社長がおっしゃってくれて…。で、それを耳にしたあの人が、俺の女なら俺を立てろなんて言ってきて、しまいに腹いせのように会社の同僚と浮気して、私はゴミのようにポイっと捨てられました」
氷の入ったアイスカフェラテをぐるぐると混ぜ、食後のデザートに頼んだ大好きなティラミスを頬張りながら私はあの男と別れた経緯を宇髄さんに話していた。
「それはまたとんでもねぇ男だな」
「だから…宇髄さんがあんな風に言ってくれて、すごく嬉しかったんです。本当にありがとうございました」
頭を下げお礼を述べる私に
「別に、ただ単に俺があいつの事気に入らなかっただけだから。礼なんざ必要ねぇよ」
宇髄さんはそう言ってアイスコーヒーをゴクゴクと飲んだ。そして半分ほど量の減ったアイスコーヒーを再びコースターに置くと
「で、なんであんな男と付き合ったの?」
さも理解できないという表情を浮かべながら私にそう尋ねてきた。私は一口だけティラミスを食べ、その美味しさで嫌な気持ちを緩和するようにしながらこれまでにあった出来事に思いを巡らせた。
「…私、仕事をするのが好きで…結構なんでも一生懸命やるようにしてて」
「なんとなく想像つくわ」
「そうですか?でもそれが…同じ部署の女の子たちには疎ましかったみたいで。…あなたがそうやって張り切ってるとこっちもそれを期待される。迷惑だから足並み揃えなさいよ、なんて言われて…嫌われてしまったんです」
「まぁそういうタイプも中にはいるな」
「それで落ち込んでた時に声を掛けてくれたのが…さっきの元カレだったんです」
あの時私を励ましてくれた彼が、あんな風になってしまうなんて夢にも思っていなかった。