第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
「すずねってさ、ガード堅そうに見えて男の趣味悪ぃんだな」
個展会場を出て開口一番に宇髄さんはそう言った。
「…自分でもそう思います」
「あんなくそ野郎久々に遭遇したぜ」
宇髄さんはそう言いながら後ろをふり返り、会場である建物をじっと睨むように見ていた。
…個展会場も出ちゃったし…これでもうさよならなのかな。…もう少し…宇髄さんと一緒にいたいな。
今日の約束は”個展に一緒にく”というだけで、それが終わりを迎えた今、もう私たちが一緒にいる理由はない。けれども私は、もっと宇髄さんの事を知りたいと思った。
「…あの!この後…まだ時間ありますか?よかったら…さっき助けてもらったお礼に、ランチか…ランチだと微妙であれば、コーヒーでもごちそうさせて下さい!」
気が付くと私はそんなことを口走っていた。そんな誘いには慣れっこなのだろう。宇髄さんは驚いた様子を一切見ることなく
「ランチ、いいぜぇ。うまいもん食って胸糞悪い気分変えようぜ。あ、でもお礼とかいらねぇから。女の子に金出されるとか俺そんなダセぇこと出来ねえし」
そう言いながら、ごく自然な動作で私の肩を抱いた。
「この近くに、すごくピザのおいしいイタリアンがあるんですけどそこでも良いですか?あ、でももし宇髄さんの行きつけとかお勧めとかあればそこでも良いですし」
「ピザ食いたい気分なんだろ?その近くのイタリアンに行こうぜ」
「はい!」
自分からこうして男性を誘うこと、ましてや今日初めてきちんとあった相手を誘うことなんて初めての事だった。マッチングアプリで連絡を取り始めて3週間。直接会ってたったの2時間。たったその程度の時間しかたっていないというのに
…宇髄さんのこと…もっと知りたい。
私は、猛烈にこの"宇髄天元"という男性に惹かれていた。