第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
彼女のそんな様子と、私が自分よりも容姿的に勝る相手といるのが気に入らなかったんだろう。
「…お前みたいな地味女がそんないい男といるなんて有り得ないな!どうせレンタル彼氏かなんかだろ?」
私に向け、あざ笑うような笑みを浮かべながらそう吐き捨てた。
…ばっかみたい。なんでこんな男…好きだったんだろう。
そう思うものの、”レンタル彼氏”とまでは行かなくても、マッチングアプリで偶然会っただけの関係の相手だ。あながち間違っていないと思うと悔しくて、目頭が熱くなってくる。
…こんな所、もう出よう。
そう思い、出入り口がある方へくるりと方向転換をしようとしたその時
「すずね…お前、こんなくそダセェ男と付き合ってたのか?趣味悪ぃにもほどがあんだろ」
そう言いながら宇髄さんが私の肩をグッと抱き寄せてくれた。その言葉と行動に、私を含めた宇髄さん以外の3人はぽかんとしてしまう。
「自分の昔の女をわざと傷つけるような女。男じゃねぇよ。こんなやつと無駄な時間過ごさなくてよかったじゃん!」
元彼はその言葉に、顔を真っ赤にしながらプルプルと小刻みに震えている。
「こんな野郎と同じ空気吸ってたらダセェのが俺に移っちまう。もう行こうぜ」
宇髄さんはそう言うと、私の肩を抱いたまま出入り口の方に誘導するように連れて行ってくれた。そんな行動に、私は驚き何も言うことも出来ないし、誘導されるがまま歩くことしかできない。
「…さっさと帰れや!くそ野郎!!!」
後方から聞こえるそんな汚い怒鳴り声と、”お客様。他のお客様に迷惑ですので、騒いでいるようでしたらお帰り下さい”と、主催者によって直接注意を受ける言葉を背に、私は宇髄さんに肩を抱かれたまま個展会場の外へと向かった。