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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん


”本日は私の個展にお越しいただき誠にありがとうございます” 


中央で挨拶をしている主催者の男性は、爽やかで、品のある男性だった。


へぇ…こんな人があの絵を書いてるんだ。


私はその男性の描く絵には興味があったが、その男性自体にはそこまで興味があったわけではないので、半分聞き流しながらその挨拶を聞いていた。

なによりもその挨拶以上に、私の隣でジーッと睨むように主催者の男性を見ている宇髄さんの事の方がよっぽど気になった。

その表情が絵を見ていた時と同じように辛そうに見え


「あの、宇髄さん」


そう声を掛けた直後


「あれ?すずねじゃん」

「…っ!」


記憶から消去してしまえたらと思ってしまうほど、忘れたいと思っていた声が私の名を呼んだ。


答えたくない。知らないふりをしたい。そう思ったのに


「おいおい。無視するなんて冷てぇじゃん」


そう言いながら肩をつかまれ、無理やりそちらを向かされてしまった。


「…他の人の迷惑でしょ?静かになよ」


顔をしかめ、私がそう答えると


「相変わらず、可愛げのない女」


ほんの1か月前まで私の”彼氏”だったその男が私を馬鹿にするような口調でそう言った。その腕には、私に向けねっとりと纏わりつくような視線を寄こしてくる女、私の元彼の現彼女であり、まぁ言ってしまえば彼の浮気相手だった女がぴったりとくっついている。


「一人でこんな場所に来てるなんて寂しい女だな」

「…一人じゃないし。人の事そうやって決めつけるの、やめてくれない?」


相手にしなければ良いのに、いちいち突っかかってくるその物言いに我慢できず言い返してしまう。


「はぁ?どこに「連れなら俺だけど?」…は?」


私のこの状況を察してくれたのか、私の頭にポンと手を置いた宇髄さんがそう言ってくれた。


「うわっ!なにこの人!ハーフモデル!?すっごい格好いい!」


私の隣にいる宇髄さんの存在に気が付いた女は、先ほどまでの仏頂面が嘘のようにキラキラと目を輝かせ、宇髄さんにじーっと熱い視線を送っていた。


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