第24章 私の全て、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※裏表現有
「……あの…実弥さん…」
「なんだァ?」
いそいそと私の着物に手を掛ける実弥さんに、恐る恐る声を掛け
「…湯浴み…してきても良いですか?」
私はそう尋ねる。
すると、私の着物の着物を脱がすためにそこに向けていた視線をバッと私の顔に向けた実弥さんは
「ハァ!?早く全部もらえって言ったのはお前だろォがァ!あんだけ人のこと誘って煽っといて何馬鹿なこと言ってんだァ!?」
私が予想していた通り、物凄く怒った表情をしながらそう言った。
「…っそうなんですけど…よくよく考えたら、私さっきまで小夏ちゃん…あ、迷子の女の子なんですけど、その子をおんぶして街中歩き回ってたんです!だから…その…絶対に…汗臭いと思うんです!初めて実弥さんとそうなれるのに…汗臭い状態なんて嫌!」
そう言って私が、私の着物を脱がしにかかっている実弥さんの欠損のある右手を両手で掴むと
「…ッチ。仕方ねェ。さっさと入ってくるぞォ」
実弥さんはさも"面倒くせぇ"と言わんばかりの顔でそう言った。
「ありがとうございます!あ、でも今回は、別々に入りたいなぁ…なんて…」
「ハァ!?!?っお前…普段は断っても自分からしつこく誘って来るくせによォ…なんで今日に限って別なんだァ!?」
実弥さんは先程よりも苛立った様子でそう尋ねて来る。
「…っ…だって!実弥さんに…あんなところや…こんなところ…触られちゃうんですもんね?…いつもよりも綺麗に…念入りに…洗いたいんですもん…」
もじもじとしながら甘えるようにそう言うと
「…っ…とにお前は…仕方ねぇ奴だなァ。俺は大浴場の方にさっさと行って来るから、お前、この部屋で、すぐ入れェ。で、すぐ出てこいやァ…」
呆れたような、それでいて照れたような顔をしながらそう言ってくれた。
「…っありがとうございます!すぐに!即!身体を清めて参ります!」
「…あぁ。俺も行って来らァ」
先程までの燃え上がりそうな欲の気配は一体どこへ行ってしまったのか、
「ほら立てよォ」
私の左腕を実弥さんが優しく引っ張り
「ありがとうございます!」
立ち上がらせてもらった私は
「では、また!」
「…へいへい」
急ぎ部屋に付いている湯殿へと向かったのだった。