第24章 私の全て、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※裏表現有
「さようならぁぁあ!」
片手をお母さんとしっかり繋ぎ、腕が千切れてしまいそうなほど大きく手を振りながら去って行く小夏ちゃん家族に私も手を振り返す。
前を向き、左手をお母さん、右手をお父さんと繋ぎ歩く小夏ちゃんの背中を見ていて思うのは
私に今すぐ子どもが出来たとしても…実弥さんは子どもが小夏ちゃん位の齢になるときにはもう…
そう考えると、自分が今心から欲している、そして実弥さんのためにしたいと思っていることが正しいことなのかどうかわからなくなって来てしまった。
…私らしくないな。
それでも私は、実弥さんと夫婦になり、どうしても家族を作りたいと思ってしまう。
「っすずね!!!」
大声で名前を呼ばれた私は、その声がした方にパッと振り向いた。振り向く前から、自分の名を呼ぶのが誰かなんてわかっていた。
迎えに来てくれたんだ!
わざわざ街まで探しに来てくれたことが嬉しくなり、私はこちらへと近づいてくる実弥さんに向け駆け出した。
「実弥さん!迎えに来てくれた「っ馬鹿野郎がァ!」…!?」
嬉しくて、その名を呼び、人目も憚らず抱き着こうとしたが、ぎゅっと目をつぶってしまう程の大声で怒鳴られ、私の足がピタリと止まった。
実弥さんが般若の形相で隊士を叱責する姿は何度となく見てきたし、そんな姿すら素敵と思っていた(むしろ怒鳴られたいとすら思っていた)。そんな私としては、実弥さんに怒鳴られるなんてどうってこともないはずだった。
でも、今日は、今日だけは違った。
実弥さんに抱き着こうと広げていた手をダラリとおろし、斜め上から私を苛立った様子を全面に出しながら見下ろしてくる実弥さんの顔をじっと見返す。
「お前ェなァ、あんな行先も書いてねえ置き手紙だけ残して何フラフラいつまでもほっつき歩いてんだァ!昼になっても戻って来ねェから心配しただろォ!」
実弥さんは私にそう言った。
その言葉に、グワァァァッと私の心の奥底から、怒り、そしてそれと同じくらいの哀しみの感情が湧き上がって来る。
さらに私を責め立てるが如く言葉を続けようとする実弥さんを
「遅くなるんなら連絡のひとつくらい「実弥さんの馬鹿ぁあ!!!」…っ!?」
私は大声で遮った。