第24章 私の全て、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※裏表現有
そんな様子が気になり爽籟に
”実弥さん、どうしちゃったのかな?”
と尋ねると
”心配すんな。実弥にも色々ある”
と曖昧な答えしか返ってこなかった。
私と一緒にいるの…嫌になっちゃったのかな…?
そんなことを考えながら空になった実弥さんがいた場所を見ていると、どんどんと思考がマイナスな方向へと引っ張られて行く。
…っだめだめ!こんな暗い気持でいたら、実弥さんを困らせちゃう!なによりも私らしくない!気分転換に私も散歩に行って来よう!まだここの温泉街はあんまり散策出来てないもんね!
そう思い至った私は、急いで身支を済ませ、部屋の角にある小さな棚の上にある紙に
”出かけてきます”
とだけ書き、部屋の真ん中にある座卓の上にある湯呑の下にその置き手紙を挟んだ。
旅館の外に出るとバサバサと羽音を立て爽籟が近づいてきた。
「どっか行くのかァ?」
「うん。気晴らしに街に散歩!そんなに遅くならないと思うから、実弥さんが戻ってきたら言っておいて。部屋に置き手紙も残してあるから」
「迷子になるなよ」
「もう!私、子どもじゃないんだよ!それじゃあ、なにかお土産買ってくるからねぇ」
爽籟にそう言いながら手を振り、私は一人温泉街へと向かった。
周辺に人気の温泉宿が沢山あるせいか、まだ早い時間帯にも関わらずたくさんの人がいた。
おいしそうな匂いにつられフラフラと歩き回りながらあれを食べこれを食べしていると、昨日の出来事で沈んでいた気持ちも晴れて行くような気がした。
次はお饅頭でも食べようかな
そう思いながら歩いていたその時
”…ふぇ…っふ…”
子どもの泣き声がどこからか聞こえたような気がした。
きょろきょろと見える範囲を見回しても、泣いている子どもは見当たらない。
”…ひっ…おとうさ…ふっ…おかあさっ…”
やっぱり、空耳なんかじゃない。見える所にいないっていうことはもしかして…
そう思い、店と店の間にある大人が一人入れる位の広さの路地に足を踏み入れた。