第24章 私の全て、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※裏表現有
…気持ちいいかも。
そんなことを思いながら、その舌の感覚を堪能していたのに、実弥さんが私の頭を両手で掴み
「……っやめろォ!」
「…痛っ…!」
グイっと引き剝がされてしまった。
しーん
部屋に沈黙が訪れ、廊下を歩く仲居さんの足音だけが聞こえてくる。
「…」
目を見開き、呆然と実弥さんを見つめていると
「…っ悪ィ…爪が…」
そういいながらスッと私の頬に手を伸ばしてくる実弥さんの手よりも早く、チリっとほんの少し痛む右頬に自らの手で触れてみた。
触れた後、その掌を見てみると
「…血…」
ほんの少しだが私のものと思われる血がついていた。
「…痛い…」
けれどもそれは、頬っぺたがじゃない。
痛かったのは私の”心”だ。
「…すまねぇ」
悲しげな表情でそう謝ってくる実弥さんに
「…っ私の方こそ!急にあんなことして…驚きましたよね?ほんの…出来心なんです!だから謝らないでください!そしてどうか忘れてください!」
務めて明るい声色でそういいながらヘラリと笑いかける。
「…すずね…あの「さて!じゃあもう寝ましょうか!」」
本当は今にも涙がこぼれ出てきてしまいそうだった。ゴロリと身体を回転させ、実弥さんに背を向け私がそう言うと
「…あぁ…」
実弥さんはそれ以上何かを言ってくることなく、私と同じように身体をゴロリと回転させ、再び私に背中を向けた。
…勇気を出して…やったことなんだけどな。雛鶴さん…作戦、失敗しちゃいました。私、どうしたら実弥さんに抱いてもらえるのかな?
なるべく背中を丸め身を小さくし、嗚咽が漏れそうになるのをこらえながら私は眠りについた。
「…今日も…いない…」
翌朝目が覚めると、実弥さんの姿はもうそこになかった。最近はずっとそうだ。
実弥さん本人に
”どこに行ってるんですか?”
と聞くと
”身体動かさねェと落ち着かねェからよォ。その辺走ってらァ”
そう言われ
毎夜街や森を駆け回る日々を送っていたんだから当たり前か
と最初は納得もいった。
けれども最近では、2.3日に1回だったそれが毎日になり、戻ってくる時間も段々と遅くなっていた。