第23章 呪いの言葉、つるぺったん✳︎煉獄さん※裏表現有り
「俺はすずねと一緒に湯浴みをしたい。以前は一緒に来てくれていただろう?なぜ今になってだめと言うんだ?」
「…っ…それは…」
その質問に答えることが出来なかったのは、杏寿郎さんに、私が自分のぺちゃんこな胸を気にしている事を知られるのが恥ずかしかったからだ。
杏寿郎さんは…何も変わってないのに…私が勝手にあの言葉を気にして…自信を無くしているだけなのに…
杏寿郎さんは、私の胸の大きさなんて気にするような人じゃない。自分でもわかっているからこそ、余計にそんな事を気にしてしまっている自分を知られたくなかった。けれども
「胸の大きさなど気にする必要はない」
「…っ!」
そう言って杏寿郎さんは、私と繋いでいた手を両手で取り、剣蛸で固くなってしまっている両手のひらで包み込んでくれた。
「……しのぶ様から…どこまで聞いてるんですか?」
杏寿郎さんの瞳を恐る恐る覗き込みながらそう尋ねると
「俺に好意を抱いたどこかの誰かが、君の胸の大きさを馬鹿にするような事を言い、君がひどくそれを気にしてしまっている、と言うところまでだな」
「…そうですか」
つまり全部っていう事じゃない。
しのぶ様が、私の事を思ってそうしてくれたことは理解できたものの、杏寿郎さんのことを2回も拒否してしまうほどにそのことを気にしてしまっている弱い自分を知られたくなかった。
情けなさと恥ずかしさで杏寿郎さんの目を見ていられず、私の視線は真下へと向かってしまう。
杏寿郎さんは私の手を包み込む手の強さを強めると
「実のところすずねを悲しませるなと胡蝶に叱られてしまってな」
「…え?」
思ってもみない杏寿郎さんのその言葉に驚いた私は、パッと視線を上げる。するといつもは釣り上がっている眉を下げ、杏寿郎さんが悲しげな目をしながら私の目を見つめてきた。
「どうして杏寿郎さんがしのぶ様に叱られるんです?」
秘湯で話をした時は…そんなこと、言ってなかったんだけどな
そう思った私が杏寿郎さんにそう尋ねると
「君を傷つけたのは俺に好意を抱いた人物のはずだと。そういった人間を全て黙らせられない限りは、君を俺の元に嫁がせることは到底認められないと、そう言われてしまった」