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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第23章 呪いの言葉、つるぺったん✳︎煉獄さん※裏表現有り


"自分で歩くから大丈夫です"、そう断ったのだが、"早くすずねと2人になりたい"と、珍しく甘えた声色で言われてしまったら断る術なんてあるはずもなく、私は甘んじて杏寿郎さんに運ばれる他なかった。








炎柱邸に辿り着き中に入ると、当たり前だが前回と変わらない景色がそこにはあった。けれども、変わってしまったものが一つ。


…どうしよう。まだ心の準備が…出来てない。


私の心だ。


あの言葉を、"つるぺったん"という言葉を聞くまでは、そこまで気にしてはいなかった。もしかしたら、たまたま疲れが溜まっていて、心が弱っていただけで、そのタイミングと重なって、"つるぺったん"という言葉が必要以上に心に重くのしかかってしまっているだけなのかもしれない。

玄関から上がることが出来ず、立ち止まっている私に


「…ほら、こっちに来るといい」


杏寿郎さんが、私に左手をスッと差し出してくれる。


「…っ…はい…」


草履を脱ぎ、端に揃えてから杏寿郎さんの手を取る。杏寿郎さんは重なった手をぎゅっと強く握り


「荷物を置いたら湯浴みだ!」


そう言った。私は杏寿郎さんのその言葉を"荷物を置いたら湯浴みをしてくるから待っていてくれ"とそう解釈した。なので


「わかりました。じゃあ私は、台所をかりて何かつまめるものでも作っておきますね」


この屋敷にある食材で何が作れるかなぁ


と杏寿郎さんに腕を引かれ、屋敷の廊下を歩きながら考えていた。けれども、私が言ったその言葉に対し、杏寿郎さんから返ってきた言葉は


「すずねも一緒に入るんだ」

「…っ!?」


というもので、現在つるぺったんの呪いにかかっている私には受け入れ難い言葉だった。


一緒に…湯浴み?そんなことをしたら…明るいところで、この貧相な胸を見られるって…そういうことでしょ?


杏寿郎さんの後について行こうと動かしていた足をピタリと止めると、それに合わせ、杏寿郎さんの足もピタリと止まった。

視線を廊下の木目の方に向け、杏寿郎さんの顔を見れぬまま


「…それは…無理です」


私はそう答えた。

私のその答えを聞いた杏寿郎さんは、ギシリと音を立てながら廊下に片膝をつき、廊下の木目に向かっている視線をその顔で遮るように私の顔を覗き込んできた。



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