第5章 その姿は俺だけの前で【暖和】
走ってみてより確信をもって感じた。下半身がとんでもなく心許ない。こんな丸出しでは、鬼の攻撃を受けたい放題ではないか。それになによりも恥ずかしすぎて鬼殺に集中できない。
時間はないけど、せめてこの丸出しになっている部分を隠す何かが欲しい!
そう思い、急いで街にある婦人服が置いてあるお店に向かい、靴下吊と靴下を購入し、厠をお借りしその場で履かせてもらった。
よし。これでなんとか素肌の部分は減った。
けれども素肌ではないとはいえ、いつもはダボついた隊服で隠れている太腿や脹脛の形がくっきりばっちり露わになっている事には変わりない。けれども私は、"短時間でできる限りの努力はしたと"満足感すら感じながら、遅れてしまった時間を取り戻す為、全速力で杏寿郎さんとの待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせの場所にまだ杏寿郎さんは来ておらず、待たせなくてよかったとホッと胸を撫で下ろしてた時だった。
「救援!救援求むー!」
一匹の烏がこちらに向かい慌てた様子で飛んできたのが見てとれた。
「っすぐに行きます!案内して!…あなたは杏寿郎さんに、私は救援に向かったと伝えて!」
「了解ィィィ」
そう言って相棒は救援に向かう私とは逆方向へと飛んでいった。
向かう途中で烏から聞いた情報から考えると、救援を求めた隊士が今戦っているのは、これから杏寿郎さんと私が頸を切りに向かおうとしていた鬼で間違いなさそうだった。
っいた!あそこだ!
シィィィィイ
「炎の呼吸壱ノ型不知火!」
鬼の攻撃を受けたのか、動けなくなっている隊士4人に今にも襲い掛かろうとする大きな腕4本を切り落とし、庇うようにその前に躍り出る。
「なんだぁ?新手の隊士かぁ?弱そうな女だなぁ!だが美味そうだ!特にその肉付きいい足!今すぐにむしゃぶりつきたい!」
鬼のその発言に、私の全身にブワッと鳥肌がたつ。そして同時に激しい苛立ちを覚えた。
「…っ肉付きが良くて悪かったわね!炎の呼吸は…踏み込みが大事なのよ!」
シィィィィイ
「炎の呼吸参ノ型気炎万丈!」
私1人だけであれば、鬼の頸を切るのも可能だったかもしれない。けれども、怪我を負った4人共足の怪我がひどいのかその場から中々逃げることができない。
このまま時間を掛けられると…私の体力ももたない。
そう焦りを感じ始めた時だ。