第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
騒ぎの発生元である部屋に到着し、中の様子を確認すると、私の視界に飛び込んできたのは身を縮こませ、おびえ切った様子で震えるきよちゃんの姿と、そのきよちゃんを睨みつけるように見ている男性隊士の姿だった。
やっぱりこいつか
ここまで向かってくる道すがら、なんとなく騒ぎの元凶はこの人なのではないかと思っていた。この人は私が包帯を交換する際も、”食事の味付けが薄い”だとか”シーツの汚れが落ちていなかった”等と、懸命にお世話をしてくれている蝶屋敷の子たちの働きに不平不満ばかりを述べていた。
"不満があるなら今すぐ出ていけ"と思いながらも、体調を気遣って薄味なんですよ?だとか、療養している隊士も多くて、真っ白になるまで汚れは落とせていないかもしれませんが、綺麗に洗って干していますよ?と波風を立てないよう受け答えをし、時にはしょうもない愚痴を聞いてあげるようにしていた。
仲間をたくさん失った戦いの後で、気が立ってしまっているのも、身体が思うように動かずにストレスが溜まっていくのも理解できる。
それでも、懸命に、時には昼夜問わず、小さい身体で頑張り続けるきよちゃんを怒鳴りつけ、怖がらせるようなことなど、あっていいはずがない。
怒りの感情を抑え、私はつかつかと病室に入り、きよちゃんを庇うように自らの背に隠した。
「大きな声を出して、どうかなさいましたか?」
穏やかな口調と、わざとらしいとも取られてしまいそうな程の笑みを浮かべ私がその人に尋ねると、
「俺は一昨日も、昨日も、そして今朝も!飯の味が薄いから味を濃くしてくれるように頼んだんだ!なのにちっとも濃くならねえ!毎日毎日味の薄いもんばかり食わされて…うんざりなんだよ!」
「前にもご説明しましたよね?料理をする人材は限られていますし作る人に対して療養している隊士の数が多すぎるんです。全員のご要望をすべて聞くことは不可能です。それにあなたは内臓を痛めていますよね?だから身体に負担がないように塩を減らして薄味にしているんですよ?」
そう冷静に話を試みるも
「んなもんそのちびからもさっき聞いた!何度も何度も同じこと言うな!うるせぇんだよ!」
全く話が通じそうな様子ではない。