第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
そんな私を冨岡様は
「何を謝る必要がある」
相変わらず冷たく感じてしまいそうな物言いではあるが、暗に私の行為が迷惑でなかったことを示してくれた。ゆっくりと顔を上げると、冨岡様のその涼やかな目と目が合う。
「…伝えなきゃ伝わらないと躍起になっている部分もあって力が入ってしまったんです。…でも…伝えようといくら頑張っても…中々受け入れてもらえそうになくて。流石に落ち込んできました!」
冨岡様は、そう言ってへへっと笑う私に、若干伏し目がちになりながら
「…諦めないでやって欲しい」
そうボソリと呟くように言った。
冨岡様の私を励ますようなその一言があまりにも意外で、私はポカンとその顔を見てしまう。冨岡様がそんな私の様子に気がつくはずもなく、
「不死川はいい奴だ。俺も不死川には幸せになってもらいたい。不死川には、柏木のような、馬鹿みたいに真っ直ぐな相手が似合う」
淡々とした口調で言葉を続けた。
いや…馬鹿みたいって
その言葉が一瞬引っかかるも、自分と同じように、冨岡様も不死川様に幸せになってもらいたいと思ってくれていることが私にはとても嬉しかった。
しぼみかけてきた私の気持ちがムクムクと力を取り戻し、
「…冨岡様!ありがとうございます!私…絶対に諦めません!…っ諦めませんからぁ!」
冨岡様に、そして壁の向こう側にいる不死川様に、私のこの熱い気持ちが届くように、大声でそう宣言した。
アオイさんから頼まれたお買い物を済ませて蝶屋敷に戻ると、ある部屋から男性の怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。
"わざとだろ!?ふざけんなよ!?俺が末端隊士だからって舐めてんだろ!?"
その言葉の内容に、そしてまるで誰かを責めるような言い方に嫌な予感がした私は、荷物を一旦玄関に置き、その病室へと駆け足で向かった。