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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


冷静に冷静にと自分に言い聞かせながらも、そのあまりに自分勝手な言い草に、私も段々と我慢が効かなくなってくる。


「知っていますか?この子は"ちび"という名前ではありません。"きよちゃん"というとても可愛い名前があります。毎日、あなたのように、ここで心身を休めている方々の看病やお世話を担ってくれている一生懸命な子です。そんな言い方はやめてください」


冷静に冷静に


けれども怒りという強い感情は制御することが難しく


「てめぇ…なに睨んでんだよ!元隠風情が隊士の俺に立てつくんじゃねぇよ!!!」


口調穏やかにと努めても、私の目には怒りの感情がしっかりと出てしまっていたようだ。


「…っ今この話において、隊士も、元隠も関係ありません!アオイさんやこの子たちに感謝の気持ちが持てないのであれば…もうここを出て行ってください!」


気がつくと私は、相手を余計に怒らせるとわかっていながらもそんなことを口走っていた。


「っ…このクソアマァァア!!!」


男は右手を振り上げ、そのまま私の左頬に向けまっすぐそれを振り下ろしてくる。


あ、叩かれる。それは別にいいとして、口の中が切れたら…アオイさんのおいしいご飯が、おいしく食べられなくなっちゃう!


私はぐっと歯を食いしばり、よろけないよう両足にぐっと力をいれた。


バチーンッ!


男の右手のひらと、私の左頬が接触する子気味のいい音と、


「すずねさんっ!」


私の身を案ずるきよちゃんの声が部屋いっぱいに響いた。

痛みと衝撃で目を瞑ってしまうも、これでも元隠として散々怪我や危険な目にあってきた私には、我を忘れ、馬鹿みたいに激情している怪我人の平手打ちなんてどうってことない。

ふと、ヒリヒリとした痛み以外に感じる違和感に、叩かれた頬に手を当てる。そして手のひらを確認すると、そこには血がついていた。


爪でも掠ったんだろうな。


のんきにそんなことを考えている私に反し


「…あ…っ…」


予想外の出血で我に返ったと思われる目の前の男と


「すずねさん…ほっぺに…血が…!」


泣きそうな声で、私の身を案じてくれているきよちゃんの声が、耳に入ってきた。




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