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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


「不死川はいいやつだ」


「…へ?」


いつもの通り冨岡様の包帯を変えていると、普段話しかけてこない冨岡様に突如話しかけられ、一瞬何を言われたのか理解が追いつかなかった。

冨岡様が言葉足らずで表現下手だと言う事は十分理解している。けれども突然そのパワーをふんだんに発揮されると、私の対応力も全く追いつかない。

戸惑っている私に全く気がつかない冨岡様は更に、


「おはぎを差し入れてみるといい」


とそう言った。


「え…あの…はい…そうして…みま…す?」


風の噂で、不死川様はおはぎが好きだと言う話を聞いたことがあるので(そのギャップもものすごく好き!可愛い!)、冨岡様が私に、不死川様とお近づきになるためのアドバイスのようなものをくれているのだと言う事は理解できた。けれども私が理解できなかったのは、


「冨岡様」

「どうかしたか」

「冨岡様は…私が不死川様の事を好きだと言う事を、何故ご存じなんですか?」


どうして、冨岡様が私にそんなアドバイスをくれたのかと言う事だ。


「私、不死川様への気持ちを、冨岡様にお話しした事はなかったと思うんですが…」


水柱であられる冨岡様と、任務以外ではほぼ初対面と言っても過言ではない私は、恋だの愛だのの事を話し合うような間柄ではない。私の不死川様に対するこの気持ちは、蝶屋敷で働いている子たちにはすでに周知の事実ではあるが、冨岡様が知っているはずがないのだ。


「どうして私の気持ちをご存知なんです?」


私が冨岡様にそう尋ねると、冨岡様は不死川様の部屋がある側の壁をチラリと見遣り


「…お前の声は大きい」


と、そう一言だけ言った。


「……声が…大きい…?」

「あぁ」


私はそのたった一言で、冨岡様の言わんとしている事を理解した。


「…っすみません!声が…大きすぎましたよね?申し訳ございません!興奮してしまってつい…冨岡様に迷惑になることまで考えが及びませんでした!」


そう言いながら包帯を巻く手を一旦止め、その場で出来る可能な限りの深さまで頭を下げ、謝罪の意を述べた。




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