第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
私のその言葉に
「…冨岡がァ?」
ものすごく不満そうな声を漏らす。
「はい!私の仲のいい同僚も、冨岡様が大大大好きって子がひとり以上いましたので!あ、でも不死川様が大大大好きって言うのは私が把握している限り、私だけだったので…だからね?私じゃないとだめだと思うんです」
最終的にその話に持っていこうとする私に、不死川様は
はぁぁぁあ
と大きな溜息をつき
「いくらそう言われようが、俺はお前とどうこうなるつもりはねェからな」
私の方を見向きもせずにそう言った。そんな様子に、一瞬心が折れそうになるも、
…ダメダメ!そんなに弱気じゃ!もう間も無く不死川様は蝶屋敷を出て行ってしまうはず。その間しか私にチャンスは無いんだから!へこんでいる暇なんて…無いのよ!
そう自らを鼓舞し
「…私だって、いくら不死川様がそう仰ろうと、諦めるつもりは毛頭ございません!絶対に!絶っっっ対に!諦めませんからぁ!」
不死川様に向けそう言った。
「それでは、失礼します!」
私は、これ以上何か言われてたまるかと大急ぎで片付けを済ませ、部屋の入り口へと向かう。
「私の気持ちは…例え不死川様にだろうと止められないのです!」
そして、最後にそう捨て台詞を吐くようにして不死川様の病室を後にした。
パタリと部屋の扉を閉め、廊下には自分ひとり。近くに誰もいないのか、廊下はとても静かで、穏やかな鳥の囀りが外から聞こえてくる。そんなのどかな雰囲気なのに、私の心はズーンと重くなっていた。
…あんな風に言ってはみたものの、あそこまではっきりと、しかも私に目もくれず、あんな事を言われてしまうと…流石にヘコむ。
はぁぁぁあ
と先程不死川様が吐いていた溜息よりも、さらに大きな溜息が私の口から漏れ出た。
…仕事しなきゃ。
けれども私には、まだ冨岡様の包帯交換と、アオイさんに頼まれたお使いというお仕事が残っている。
大丈夫。…大丈夫だから。
自分にそう言い聞かせ、重い足をなんとか引きずり冨岡様の部屋へと向かった。