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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


「お前…なんでそんなに俺がいいんだよ」


意気揚々と不死川様の包帯を変えている私に、不死川様が静かな声でそう尋ねた。


「なんで…ですか?そんなの…不死川様が好きだからに決まってるじゃないですか」


私が当然と言わんばかりにそう答えると


「っだからよォ…それがどうしてだって聞いてんだろうがァ」


呆れた様子を隠すことなくそういった不死川様に、私が返す言葉は考えるまでもなく決まっている。


「そんなのわかりません」

「はァ?わかんねェんなら、それこそ俺なんかにこだわる必要ねェだろうがァ」


不死川様が顔をしかめ、私を睨んでいる。


「…わからないと…ダメですか?人を好きになるのに理由って…本当に必要ですか?」


「……」



私のその問いに黙ってしまった不死川様に畳みかけるように私は言葉を続ける。


「知った口聞くなと思われてしまうかもしれませんが、私、わかるんです。不死川様、これから一人で生きていこうとか思っていますよね?」


包帯交換のために触れていた不死川様の腕が、ピクリとかすかに反応した。


「……どうしてそう思う?」


「だって、不死川様、とっても優しい方ですもん。自分がその人の前からいなくならなきゃならない時がすぐ来るってわかってたら、絶対その人のこと遠ざけようとしますよね?」


弟さんの件が、そのいい例です。


その言葉は、もちろん口に出すことはなく、自分の心の中に留めた。


「私は、不死川様がこれからの人生、1人で過ごすことを選ぼうとする…そんなの耐えられません。許せません。だから私がそばに居ます。私は不死川様のそばに居られれば、それだけで世界で1番幸せになれます。そんな幸せいっぱいの私のそばにいれば、不死川様にもその幸せがきっと伝染します。絶対に後悔はさせません。だから私のところにお嫁に来てください!」


あ、最後間違えたかも。


そんなことを心の中で思っていると、


「…っく…お前…最後のは…おかしいだろう…」

「…っ!」


不死川様が…笑ってる…!


私が見る、不死川様の初めての表情だった。




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