第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
その言葉に私は、心底がっかり…するはずもなく、
そう言ってくることは最初から想定済!こんな突然好き好き言う見知らぬ女を遠ざけたいって思うのは、普通の感覚を持つ人間であれば当然の事!だから私、全然めげない!へこまない!そんな時間、1分だって1秒だって勿体無いもの!
と心の中で雄弁に語りながら
「すみません。療養している人も多くて、蝶屋敷で働く他の人たちは自分の仕事で手一杯なんです。申し訳ないですが、私で我慢して下さい。仕事は責任もって果たします。なのでどうか私にやらせて下さい下さい」
緩みそうになる頬を抑え、きりりと表情をつくり(もちろん自分の仕事に責任を持ちたい気持ちは本物である)、丁重に不死川様の申し出をお断りした。
すると不死川様は
「…そうかィ」
諦めたようにそう言ってくれたので、
「それでは、胴周りも私の方で交換させてもらいますね!傷がきちんと塞がっていれば、明日は交換しなくても大丈夫ですので、今日だけはどうか我慢してください!」
私はいそいそと胴回りの包帯交換にとりかかった。
「…チッ」
手をかけた途端に聞こえて来たその舌打ちも
今!今!私に向けて!私だけに向けて舌打ちをしてくれた!嬉しい!今まで視界にすら入らなかった私に…!
それすらも嬉しいと思ってしまう私は、やはり誰がどう見ても頭のおかしいな女に違いない。
「失礼します不死川様!今日も、私、柏木すずねが包帯の交換に参りました!」
「…毎回毎回名乗るんじゃねェよ。鬱陶しい」
目は覚めたものの、不死川様はお医者様の診断でしばらく蝶屋敷で療養を続けることになった。
私に残された時間はあと僅か。残った時間で、私は必ず不死川様の心をいとめ、そばにいることを許してもらわなければならない。