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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


足早に冨岡様と不死川様の療養する個室のある方へ向かっていると


「あ!すずねさん!こんにちは!」


ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべた禰󠄀豆子ちゃんが恐らく直進しようとしていた廊下を曲がり、こちらまで小走りでやって来た。


「こんにちは、禰󠄀豆子ちゃん!」


私も小走りでこちらに近づいてきてくれる禰󠄀豆子ちゃんに近づいた。

禰󠄀豆子ちゃんは私の正面で立ち止まると、 


「今日も包帯交換ですか?ご苦労様です!」


ニッコリと私に笑みを向けてくれる。


「私には雑用と包帯交換しか出来ないからね。しかも、炭治郎くん達の包帯は禰󠄀豆子ちゃんが交換してくれてるでしょう?禰󠄀豆子ちゃんだってまだ怪我が完治してないのに…いつもありがとうね」


私がそうお礼を述べると


「いいんです!怪我が治りきっていないのはすずねさんも一緒だし、私がやりたくてやってることなので!」


ニコニコと可愛い笑みを浮かべながらそう言う禰󠄀豆子ちゃんが鬼だったなんて、もう遠い昔の話の出来事のような、そんな気がしてならない。










私は初めて禰󠄀豆子ちゃんの話を耳にしたとき、 


鬼の癖にどうして頸を切られないのか。どうして当たり前のように存在が認められているのかと、怒りに近いような感情を抱いていた。けれども、そんな醜い感情を抱いた私を、鬼から庇い助けてくれたのが他でもない禰󠄀豆子ちゃんだった。

私はその時の禰󠄀豆子ちゃんに、人か鬼かなんて関係ない。大事なのはその人が持つ”心”なんだと教えられた。











そんなことをぼんやりと考えていると


「…すずねさん?」


禰󠄀豆子ちゃんは急にしゃべらなくなった私を心配してくれたのか、その可愛らしい大きな瞳で私のそれを覗き込んでいる。


「…うぅん…何でもないの」


あの時の、私の偏見まみれの認識を謝りたいと思っていた。でもそれは、禰󠄀豆子ちゃんの為というよりも、自分の罪悪感を昇華したいという、そんな狡い気持ちの方が大きい気がした。


…だから言わない。言うべきじゃない。


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