第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
「………」
「…え?あの、ちょ…待ってください…っ!」
不死川様は私のそんな愛の告白が一切聞こえなかったかのような素振りで踵を返し、
「頭おかしいんじゃねぇかァ」
そう独り言のように呟くと何処かに行ってしまった。
追いかけたい。
そう思った私だが、今私の足元には、急ぎでお願いしますと頼まれた洗濯者たちがいる。
「…もう!タイミング悪いんだから!」
そう誰に向けてかわからない文句を言った後、足元の籠をグッと持ち上げた。急ぎ洗濯場に向かっていると、前からアオイさんが歩いてくるのが見え
「アオイさん!不死川様が目を覚ましました!水を欲しがっていたので持って行ってあげてください!」
私がそう声を掛けると、アオイさんは
「本当ですか!?」
珍しく慌てた様子でそう言い、
「わかりました!すぐに行きます!」
と駆け足で台所がある方へと向かっていった。
私も今すぐ不死川様のところに行きたい。でも仕事を…投げ出すわけにはいかない。
不死川様の部屋へ向け、走り出したくなる衝動をぐっと抑え、私は今の大事な持ち場である洗い場へと急ぎ向かった。
洗い物を終えて、その足で不死川様のいる個室へと向かいたい…そんな自分勝手な気持ちに負けそうになりながらも、いつも通りに仕事をこなし、いよいよ皆さんの包帯交換の時間が訪れた。それはすなわち、いつも通りの流れで進めれば、自ずと不死川様に会いに行けるということを意味する。
いつも通り、いつも通り。
そう自分に言い聞かせながら、各部屋を回っていくものの、
「柏木さん、なんか焦ってる?」
なんていつもよく話しかけてくれる、私と同じくらいの年齢の飯田さんと言う男性隊士に言われてしまう。
その言葉に”まずい。態度に出ていたかな?”と内心焦りながら、
「次の仕事がいっぱい詰まってて」
と適当なことを言ってごまかした。そんな私に
「いつも頑張ってて偉いね」
と、優しく声をかけてくれる飯田さんに心の中で、”ごめんなさい”と謝罪を述べながら、丁寧に、尚且つ迅速に包帯を交換していった。