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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


途中で止まってしまっていた包帯を巻く手を手早く動かし、それを無事済ませた私は今立っているベッドの左側から右側へと急ぎ移動し、何かをつかみ取ろうとしているのか、依然として浮かび上がっているその手に、ゆっくりと両手で包み込むように触れた。


「大丈夫。…大丈夫ですよ」


そう言いながら、ほんの少し不死川様の手を包む力を強くすると、フッと力の入っていた腕がだらりと脱力した。私の声が届いたのか、ただ単に力の限界を迎えたのか。きっと後者の理由だろうが、スゥスゥと穏やかな表情で眠る不死川様の顔に、ホッと安心した。



その日以降、私は正式に包帯交換係に任命され、雑用兼蝶屋敷に身を置く自力で包帯を交換できない隊士たちの包帯交換係として尽力を果たすこととなった。

不死川様は毎日のようにうなされていた。私はその度に、


大丈夫。大丈夫ですよ。


と馬鹿の一つ覚えのように繰り返し、最初の時のように手を握ったり、おでこや頭を撫でた。好き勝手触れて、罪悪感がなかったわけではない。それでも、私の自分勝手な都合の良い解釈かもしれないが、そうすると不死川様はスゥスゥと安心したように深い眠りへと戻って行ってくれた。

















蝶屋敷に身を置かせてもらうようになって5日が経った。

いつものように、各部屋を回りながら汚れ物を回収したり、なにか要望はないかと聞きまわっていた私を


「おい」

「…っ!」


少しかすれた声で呼び止めたのは


「喉が乾いた。水、くれねぇかァ?」


聞き間違えるはずもない、不死川様の声だ。


慌てて振り向くと、指が欠損してしまった右手で、自身の左肩をぐりぐりと揉むようにしている不死川様が、そこに立っていた。 


起きてる。
立ってる。
話してる。


その事が嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくてどうしようもなくなってしまった私は、


「…っ好きです!好きなんです!絶対に!絶対!私が毎日不死川様を笑顔にします!幸せにします!だから私に、不死川様の残りの時間を全てください!」


なんの躊躇もなく本人に向け、傍から聞けば婚姻の申し込み紛いのことを言っていた(最終的には不死川様と絶対にそうなるつもりでいる私には何の問題はない)。



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