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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん


バタバタとアオイさんに頼まれていた仕事をこなしていると、


「すずねさーん」


「はぁい!」


かわいらしい声に名前を呼ばれ、振り向いたそこには予想した通り、すみちゃんの姿があった。すみちゃんがぱたぱたと足音を立て、汚れた衣服やシーツの入った籠を運んでいる私のところまで走り寄ってくる。


「私に何か御用時ですか?」


籠を一旦自分の隣に置き、そのままほんの少し体制を低くし、すみちゃんと目線を合わせる。


「足りないお薬が出てきてしまって、私が急遽買いに行くことになりました。でももうすぐ皆さんの包帯を交換しなくてはならない時間で…。すずねさん、包帯を巻くのがとても早くてお上手だとお伺いしました。なので私の代わりに…皆さんの包帯を交換して来て頂けないでしょうか?」


私にそんなお願いをすることが申し訳ないと思っているのか、すみちゃんの両眉が、悲しげに下がってしまっている。私は、そんなすみちゃんの頭にポンと右手を置き、


「包帯の交換ですね!お任せください!何を隠そう私は、包帯を巻くことに関しては隠で1位、2位を争う実力の持ち主です!ご安心くださいませ!」


そう言いながら、すみちゃんの頭から手を離し、右腕にぐっと力こぶを作って見せた。そんな私の行動が意外だったのか、すみちゃんは元々真ん丸なそのかわいい瞳をさらに丸くし、その後ニコリと安心したような笑みを見せてくれた。


「ありがとうございます!すずねさんがここに来てくれて、とても心強いです」


そういいながら私の左手をかわいらしい両手でぎゅっと掴んだすみちゃんのその行動に、心がぎゅっと苦しい程に締め付けられた。





屋敷の主人である胡蝶様は、最後の戦いで見事上弦ノ弐をその身を犠牲にすることで打ち破ったと聞いた。私よりも年下で、この先たくさんの幸せを享受するべきはずの人だったのに。

そしてその主がいなくなったこの屋敷で、懸命に傷ついた隊士たちの看護をしてくれているのが、まだこんなにも小さいすみちゃん、きよちゃん、なほちゃん。そしてアオイさんだ。



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