第22章 残りの時間、私が貰い受けます✳︎不死川さん
ずっと好きだった。
ふわふわの白い髪も。鋭く見えて、実はまつ毛が長い優しい目元も。たくさんの人を守って、たくさん負ってしまったその傷も。
でも隠の私にはどうしようもなく遠い存在の人で、たまにその姿を見れるだけで幸せだった。どこかにいる素敵な女性と、幸せに笑っていてくれればそれでいいと、そう思っていたの。
なのに。
25歳までしか…生きられない…?
たまたま耳にしてしまったその残酷な事実に、私の心は潰れてぐちゃぐちゃになってしまったような、そんな気がした。そして、それと同時に私は思った。
あの、見た目に反して酷く優しいあの人は、きっと残りの人生を、誰も悲しませないようにと1人で生きようとする。誰かを置いて死ぬことなんて出来ないと、きっと、1人で生きることを選ぶ。絶対にそうする。
「そんなこと…私が絶対に…っさせない!」
呟いたその言葉は、自分へと放った言葉か、それともあの人へと放った言葉か。自分でもわからない。
それからの私の行動は早かった。
直属の上司である後藤さんに、自分の気持ちを、自分がこれからどうしたいのかを包み隠さず話し、残っていた業務から離れたい旨を打ち明けた。そんな私の個人的過ぎる我儘に後藤さんは、
「俺は柏木を応援する!思うままにやってこい!」
と心なしか、目を潤ませ、私の肩をがっしりとその両手で掴みながらそう言った。
「ありがとうございます!」
後藤さんに深く深く頭を下げ、お礼を述べ終えた私は、その足ですぐさま蝶屋敷へと向かった。
そうして今度は、アオイさんに、
"蝶屋敷で不死川様のお世話をさせて下さい!他のどんな雑務も必ず精一杯やります!どうしても…どうしても、不死川様のお側にいたいんです!どうかお願いします!"
怒られることを覚悟しながら、馬鹿正直にお願いをした。けれども、そう覚悟したのにも関わらず、意外にもアオイさんは
「人手が足りていないので、どんな理由であろうと手を貸していただけるのは助かります。それに、柏木さんなら言葉の通り働いてくれると思うので、こちらからも是非お願いします」
と、そんな風に言ってくれた。
こうして私は、蝶屋敷に身を置かせてもらうこととなった。