第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
ズルズルと半ば引きずられるように2人に連れていかれる私は
「…っもうお願いだからやめて下さい!私のために…争わないで下さい!」
気づくとそう叫んでおり、
なにその安い恋愛物語みたいな台詞
と自分の口から出てきた臭い台詞にゾワゾワして鳥肌が立った。
あぁダメだ…私の頭も…沸いてる
急に力が抜けてしまった私は、されるがまま2人に中庭へと連行されていく。
そんな私たち3人の背後から
「しのぶさん!止めなくていいんですか!?柏木さん、怪我しているんですよね!?」
「私がきちんと診察しましたから大丈夫ですよぉ。第一、すずねさんがきちんと療養するためには、ご自身であの二人をなんとかしていただかないと。あの感じだと、すずねさんが蝶屋敷を出るまで、煉獄さんも冨岡さんも時間を見つけてはここに来そうなので。残念ですが、私もそこまで面倒見きれません」
「けっ。惚れた腫れただなんて羨まし…じゃなかった!馬鹿みたいなんだよぉ!相打ちになって二人とも朽ち果ててしまえぇ!!!」
「ギョロギョロ目ん玉と半々羽織…どっちがメスを物にするか見ものだぜ」
会話なんだか独り言なんだからよくわからない言葉たちが聞こえて来る。
あぁ…もう私に逃げ道はない。あれ?そもそもどうしてこんなことになったんだっけ?あ、そうだ。おにぎりだ。サツマイモの炊き込みおにぎりと鮭のおにぎり。あれだ。あいつらが全部悪いんだ。どっちも美味しくて、どっちも好きだけど。師範も冨岡さんも、2人とも魅力的で、2人とも美味し…じゃなかった好きなの。決められない。決められやしない。
「呼吸を使うのは無しだ!純粋に剣技だけで勝負しよう!」
「あぁ。それで構わない」
そう言っていたはずの二人が盛大に呼吸を使い、
"柱のくせに加減もわからないんですか?蝶屋敷の中庭をこんなにめちゃめちゃにしてどう責任を取ってくれるんですか?"
仲良く並んで正座をさせられ、しのぶさんに叱られるのは数十分後の未来の話。
「柏木!俺と冨岡どちらが好きなんだ!」
「柏木。俺と煉獄どちらを選ぶ」
「…そ…そんなの…っ決められませぇん!」
私の苦悩はまだまだ続く。
To be continue…?