第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
「好いた相手の身を案じるのは当然のことだ」
「…っ!」
「まぁ」
その問いに答えたのは、師範ではなく冨岡さんだった。
しのぶさんの楽しげな声色に
そんな余計なこと…言わないでよぉ!
そう思いながら固まっていると、
「む!冨岡!抜け駆けは良くない!柏木を好いているのは俺も同じ!自分だけが特別と思ってもらっては困る!」
「まぁまぁ」
「…っ!?」
…どうして…そんなこと今言うのぉ!
師範の口から発せられた余計な一言に、私は再びバサリと頭まで布団を被り、
「まぁまぁ。柏木さん。厄介な人たちに同時に好かれてしまったものですね。羨ましい限りです」
全く羨ましくなさそうなしのぶさんの言葉に、聞こえないふりをした。
お願いお願い!誰かこの空気をぶち壊してぇ!
そんなことを考えていると、
ドタドタドタドタドタドタ
「………今度は、どこのお馬鹿さんでしょうか…?」
迫り来る賑やかすぎる足音たち。
空気は壊してくれてるけど…やめてやめて!もうしのぶさんを怒らせないでぇ!
布団で身を縮こませ、しのぶさんから感じる怒りの恐怖に耐えている私の耳に、
"すずねさぁぁぁあん!"
"善逸!静かにしろ!ここは蝶屋敷だぞ!"
"なんだ!勝負か!?誰が1番初めに部屋に着くか勝負してんのか!?おっしゃぁあ!負けねぇぞ!俺様が一番乗りだぁ!"
お馴染みの3人組の声が聞こえてきた。
うん、そう言ってる炭治郎君もちょっとうるさいみたい。伊之助くん、助けてもらったのに申し訳ないけど、お願いだから来ないで。善逸くんは…よくわからないけど、やっぱり来ないで。
騒がしい足音が部屋の前まで来ると、
バーンッ!
ドアが壊れてしまうんではないかと言う程激しく扉が開き、
「俺様の勝利だぁぁぁあ!!!」
その雄叫びと共に、伊之助くんが現れた。
それに続いて、
「すずねさぁぁん!大丈夫ですかぁ?」
「義勇さん!やっと追いつきました!」
善逸くんと、炭治郎君も現れた。
けれども
「「「……っ!」」」
部屋の状況を見るや否や、3人はピタリとその動きを止め、先程までの騒がしさが嘘のように静かになった。