第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
そんな水柱様の様子を
師範とは…全然違うな
とそんなことを考えながら見ていた。前に師範に、今日も握ったサツマイモの炊き込みおにぎりをお裾分けした時は
"美味い!…美味い!"
と、水柱様とは全く正反対の騒がしいとも言える反応を見せてくれた。それはそれでとても嬉しかった。けれども、
…水柱様…なんだか…弟に似ている
いつも、
"お姉ちゃんの握ったおにぎりは最高に美味しい!世界で1番だ!"
と、嬉しそうに言った後、もぐもぐとひたすらおにぎり食べていた弟の姿と、今目の前でおにぎりをもぐもぐと召し上がっている水柱様のご様子がなんだか重なって見えた。そんなことを考えていると、なにやら胸がホッコリと温かい気持ちでいっぱいになる。
更には、
…ふふ。水柱様ったら…ほっぺたにご飯粒がくっついてる。…気がつかないのかな?
ほっぺたに2粒もご飯粒をくっつけているのにも関わらず、そのまま食べ続ける水柱様を
可愛い
そう思ってしまう自分がいた。
私は無意識のうちにそのご飯粒に手を伸ばし、
「水柱様、ほっぺた、くっついていますよ」
それを手で取ると、
パクリ
かつて弟にもしてあげたように、それをそのまま自分の口に運んだ。
そんな私の行動に、水柱様微かに反応したようにも見えたが、
…もう一つも、取ってあげなくちゃ
そんな考えが頭を占めていた私には、不思議とそんな些細な変化はどうでも良いように思えてしまい、再び水柱様のほっぺに手を伸ばし、目的の米粒を手に捉え
パクリ
再びそれを口に含んだ。
後々冷静になって自分の行動を振り返れば、上官に対し、いかに自分が恥ずかしい行動を取っていたかわかったようなものだが、残念なことに自分よりも年上であるはずの水柱様を、完全に弟と重ねてしまっていた私は、そんなことに気がつくことすらできない。
あと一口鮭のおにぎりを残したまま私をじっと黙って見ている水柱様に対し、
「こっちのサツマイモの方もどうですか?私は、家にまだ残してきた分がありますので、もしよかったら召し上がってください」
残っているサツマイモの炊き込みおにぎりも勧める私を、
「…いいのか?」
水柱様がじっと見ながらそう問うてきた。