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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】


予想外の冷たい返事に、まだ一言しか会話を交わしていないというのに、早速私はこれ以上何を話して良いかわからなくなってしまっていた。


「………」

「………」


2人の間に沈黙が流れる。けれども次の瞬間


ぐぅぅぅう


何やら気の抜けてしまいそうな音が水柱様の方から聞こえてきた。


え?…今…お腹がなった…?


動揺を隠すようにパチパチと瞬きを繰り返す私に対し、水柱様はその置物のように整ったお顔をピクリと動かすこともなく、ただただ先程会話を交わしたままに私のことをじっと見続けてる。あまりにも動じない水柱様の様子に


気のせい…だったのかな?


そう思った。けれども、


ぐぅぅぅう


再び聞こえてきたその音に、


やっぱり、水柱様だよね?お腹が空いているのかな…?


あんな音を二度も聞いて、そう思わないはずがない。


私は懐に手を突っ込み、任務の際には必ず持ってきている"ある物"に手を伸ばし、その形を確認する。


うん。大丈夫。潰れてはいなさそう。


それを掴み懐から手を出し、竹皮の包みを開きながら水柱様へと近づいた。


「あの、水柱様」

「なんだ」


今度は返事をしてもらえた事に安心感を覚え、


「これ、よろしければ召し上がってください」


私がすっと水柱様に向け両手で差し出したのは


「…おにぎりか…」


「はい!」


任務が終わったら食べようと思っていたおにぎりだ。


「海苔がついているのが鮭のおにぎりで、もう片方は…見ればお分かりになるかと思うんですけど、さつまいもを一緒に炊き込んだ炊き込みおにぎりです!両方とも、美味しくできているので是非召し上がってください!」


水柱様は私の思わぬ行動に戸惑っているのか、私が差し出したおにぎりをなかなか受け取ろうとはしてくれない。


…余計なこと…しちゃったかな…?


そんな不安が頭をよぎり、差し出した手を引っ込めようとしたその時、


「…助かる。ちょうど腹が空いたと思っていたところだ」


そう言って、海苔で包んである鮭のおにぎりの方を徐に掴んだ。


良かった…受け取ってもらえた!


水柱様は、おにぎりを手にするや否やそれにパクリとかぶりつき、表情を変える事なくもぐもぐと無言で咀嚼し始めた。


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