第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
杏寿郎さんはその言葉に一瞬ピクリと反応を見せた後、千寿郎さんが杏寿郎さんにしているのと同じようにその目を見返した。
「誤解しないでください。その感情は、もちろん兄上とは別の種類の"家族として"と言う意味です。ですがもし、兄上がまたすずねさんを今回のように悲しませるようなことがあれば……すずねさんのことは、僕が幸せにします」
「…千寿郎さん…」
この状況で不謹慎かもしれないが、私はその千寿郎さんの言葉が心の底から嬉しく、嬉しすぎてあっという間に涙が溢れてきてしまった。
あの頃、杏寿郎さんがいなくなってしまい、辛くてどうしようもなくて、杏寿郎さんのところに行きたいと思ってしまった時でも、決して"自ら命を絶つ"という選択肢だけは選ばずに済んだのは、他でもない千寿郎さんのおかげだった。千寿郎さんが、あの頃の私を、優しさ、笑顔、そして美味しいご飯で支えてくれた。
「…っ…ありが…とう…」
そう言いながら手で顔を覆い、グズグズと泣く私の腰を、杏寿郎さんがグッと引き寄せる。そして、
「そうか。それは頼もしい!」
千寿郎さんのその言葉に、杏寿郎さんは優しい声色でそう答えた。けれども、その後すぐに、
「だがいくら相手が千寿郎とて、すずねを頼むつもりも、そして今後すずねをあのように悲しませるつもりもない。今度こそこの手で必ず、誰よりも幸せにすると今ここで誓おう」
私の腰を掴む手をグッと強めながら言った。
「…本当ですか?」
千寿郎さんのその問いに、
「あぁ!」
杏寿郎さんが力強く答える。その答えに、
「はい!」
千寿郎さんは、今世で私が初めて見る、最高の笑顔を見せてくれたのだった。
私はもう喜びで我慢ができず、杏寿郎さんの腕から抜け出すと
「…っ千寿郎さん…大好き…っ!!!」
「…うわっ!」
千寿郎さんにギュッと半ば飛びつくように抱きついた。千寿郎さんはそんな私の行動に驚きながらも、私の身体を抱きとめてくれた。更に、
「千寿郎!俺は、お前のことを心より誇りに思う!そしてすずね、君のことを心より愛している!」
「ひゃっ!」
「うわぁ!」
そんな私と千寿郎さんを2人一緒に抱き込み、杏寿郎さんが大声で叫ぶ。