第1章 頭に響く無駄に大きい声【音好きシリーズ】
容赦ない拳骨を頭にくらい、恨みがましく天元さんを睨む私に告げられたお館様直々の任務とは
"恋人同士で訪れると女性だけが必ず姿を眩ませる花畑がある。炎柱煉獄杏寿郎と共にそこへ行き、調査を進め鬼を退治してくるように"
とのものだ。その任務を聞いた私の眉間に、思わずグッと深い皺が刻まれた。
「…お前一応女だろ。その顔はどうかと思うぜ」
そう言いながら天元さんが私の眉間に刻まれた深い皺に両親指を当てグイッと伸ばす。
「っ痛いです」
そう言って後ろへと飛び退いた私を、呆れた目で天元さんが見ていた。
「もぅ。自分の馬鹿力を考えて下さい…」
私はサスサスと自分の眉間を右手で撫でながら、天元さんを睨みつける。
「へいへい馬鹿力で悪かったな。ってことで任務は今夜だ。さっさと準備しておけよ」
「…なんでよりによって私なんです?もっと適任な人材がいますよね?胡蝶様とか甘露寺様とか」
「阿保か。始めから同じ任務に2人も柱を向かわせるわけがないだろう」
「…それはそうかもしれませんけど…」
ブツブツ言いながらクナイを胸元にしまっていると
「すずねちゃんは炎柱様…苦手だものね」
雛鶴さんが"困った子ね"と言わんばかりの顔で私を見ていた。
「あいつ無駄に声デケェからな」
「体格も天元様にと比べたら小柄に見えるけど、一般的な成人男性としては大きい方だしね」
「まさに!すずねちゃんが苦手とするタイプそのものです!」
そこまでわかっているなら天元さんから断ってくれれば良いのに。
そんな気持ちが顔に出ていたのだろう
「平隊士のお前がお館様からの任務を断るなんざ10年早ぇ。さっさと準備して行ってこい。待ち合わせ場所はこの紙に書いてある」
そう言って天元さんは私に四つに折り畳まれた紙をズイッと押し付けてきた。
「…わかっています」
"はぁ"
と大きな溜息をつきながらその紙を受け取り、カサリとそれを開いた。
「ここは…山の麓の甘味屋か。よし!早めに行って甘味でも食べる事にします!」
確かここは絶品のお団子があった筈。嫌な思いをする前に、美味しいものでも食べて英気を養おう。
「おうおう好きにしろ。ついでにお前、もう少しその男嫌いをなんとか出来るように煉獄と話でもして来いや」
そう言って天元さんは部屋の奥へと消えて行った。