第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
「…っバッカみたい!なんなの!?昔結婚を約束したなんて…そんな事ありえない!…嘘に決まってる!…っ…」
どんなに泣いて叫んでも、
「他人にどう思われようが関係ない。俺は、すずねだけを愛し、すずねだけを想い続ける。君にも、きっとそんな相手が現れる」
杏寿郎にはもう、…うぅん。最初から、私の声なんて届かない。
「………っあっそ!別に…キスなんて…本気でして欲しいなんて…思ってないから!…あぁムカつく!もう顔も…っ見たくない…」
精一杯の虚勢を並べて、
「…さっさと…あのすずねって人のところに…行けばいいでしょ…!…二度と…私の前に…現れないでっ!!!」
嘘で塗り固めようとしたこの関係に、
「…あぁ。本当にすまなかった。…君の幸せを、願っている」
「…っ!!!」
さよならをした。
杏寿郎は、最後に私に向かって深く頭を下げると、それ以上何も言うことなく去っていった。
「…っ願わないでよ…馬鹿…っ…」
悲しくてどうしようもなかった。でも、それと同じくらい
もう嘘をつかなくていいんだ
と安心した。
ぐしぐしと涙を乱暴に拭い、ポケットに入れていたスマートフォンを取り出す。メッセージアプリを起動し、杏寿郎とのトークルームを削除し、
「…さよなら」
連絡先も削除した。
好きだったの。本当に。欲しかったの。心から。
杏寿郎とのトークルームを削除し、1番上に上がってきた、"素敵な相手がいる私には関係ないし"なんて思って、適当に返事を返していたメッセージが目に留まる。
画面をタップし
ツツツツ
っと電話を掛けた。
「……あ!もしもし?今、平気?………あのさ!この間のイケメンとの合コンの件、やっぱり参加してもいい?………運命の相手?そんなん嘘だし!だいたい運命なんてね…あるわけないじゃん!………そうそう、相手ってのはね、自分で探して捕まえんのよ!…………やった!じゃあまた!詳細はメッセージでね」
通話を切ってスマートフォンをポケットにしまう。
…運命だと思ったんだけどな。
感傷にのまれそうになる気持ちを奮い立たせ、
「…次よ…次々!」
嫌味なくらい綺麗なお月様に拳を振り上げ、私は家への道を歩き始めた。
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