第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
あんなにも大切で、愛していたのに。思い出した今となっては、恋焦がれ、胸が焼き尽くされてしまいそうだった。
「そうねぇ…あ。わかったわ」
名案が浮かんだ、といわんばかりの声に、胡蝶先生の顔を見ると、
「きっとね、煉獄先生とすずねさんの二人があんまり素敵だから、神様が嫉妬して意地悪したくなっちゃったのよ」
そう優しい笑みを浮かべながら言った。
俺は、胡蝶先生の俺では到底思いつかないような発想に驚き、ただ目を見開き、その顔をじっと見ていることしか出来ずにいた。
「私は…早くに死んじゃったから、2人がどんな風にあの頃を過ごしていたか、そこに関しては全然わからないんだけど…。例えその姿を知らなくても、2人が心から愛し合っていたことはわかるわ。だから…ね?もう自分を責めるのはやめましょう?やるべき事は、もっとほかにあるはず…。そのしょうこさん?その人もね、本気で煉獄先生のことを好きなのであれば…好きな人に、いつまでも嘘をつき続けるのは、辛いと思うの。その嘘をやめるきっかけを作ってあげる方が、それを容認し続けるよりも、ずっと彼女のためになるんじゃないかしら?」
その言葉に
フッ
と、心が軽くなった気がした。
優しい笑みを浮かべながら俺を見る胡蝶先生に、
「…胡蝶先生は、なぜそのように素敵なものの考えができるのだろう?」
そう尋ねると、
「あら、そんなことはないわ。でも、しいて言えば…私は煉獄先生と、すずねさんカップルの、ファン第一号だから。2人には絶対に幸せになってほしいの」
そう言って両掌を合わせ、満面の笑みを向けられる。
「ありがとうございます。…胡蝶先生と話せてよかった」
何が1番大切で、何を自分が1番すべきか、ようやくわかった。
「お礼なんて良いの。それよりも、早くすずねさんに会わせてくださいね」
俺の心に、もう少しの迷いはない。
「はい!必ず!」
キーンコーンカーンコーン
テスト期間最後のチャイムが鳴り
おわったー!
そばの教室から生徒の声が聞こえて来た。
「終わりましたね。煉獄先生も、今日は早く帰りますよね?教室に行きましょうか」
「はい!」
仕事を終え真っ先に向かったのは、前に一度だけ送り届けた事のある、彼女の家の側の公園だった。