• テキストサイズ

鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】


「それにしても、そのしょうこさんって女性、連絡は取ってくれても会おうとしてくれなのは、少し厄介ねぇ…」

「…あぁ。直接会って話がしたいと何度言っても…今は体調が悪いから会えないと、そう言われてしまってな…」

「そんなんぜってぇ嘘じゃねえか」

「…俺も、そうは思っている。だがしかし、もし本当にそうだったらと思うと…強引に踏み込めない」


はぁ…


自分でも信じられないほど深いため息が自然と口から漏れて出る。


「そのしょうこって女の家は知らねえのか?」

「はっきりとした場所は知らない。だが一度だけ、側まで車で送ったことはある」

「あまりいい案とは言えないけど…そこで待ち伏せして彼女のことを捕まえるのが、一番早く解決には繋がりそうね」


正直なところ、あまりその手段は使いたくないと思っていた。あの時は、彼女のことをすずねだと本気で思っていたから家のそばまで送り届けるのになんの抵抗も感じなかったし、むしろ嬉しくて仕方なかった。けれども、こうなってしまえば、もうそう思えるはずもない。


「待ち伏せして探し出すか…、俺としてはあまり気が進まない」


俺のその言葉に、宇髄が急に立ち上がると


「あぁあ!うじうじしやがって!気持ち悪いんだよ!んな風に悩んでる間に、柏木がどっか行っちまっても知らねえからな!」


椅子を乱暴にデスクにしまい、


「タバコ!」


とそれだけ言うと、職員室を出て行った。


前回のこともあり、宇髄の


”どっか行っちまっても知らねえからな!”


その言葉が、俺の心に深く突き刺さる。


わかっている。俺もわかっているんだ。でも、どうしても”自分が彼女をすずねと間違えてしまったから”と、そのどうしようもない罪悪感が、強引な行動に出たいと思う自分を後一歩のところで引き留めてしまう。


はぁ…


と先ほどよりも大きなため息が出た。


「はい。甘いものでも食べて、少し落ち着いて下さい」


そう言って、胡蝶先生が俺のコーヒーの隣に置いてくれたのは、小さなチョコレート一粒。


「…不甲斐ない姿を見せてしまい申し訳ない。だが…共に過ごした時間が少ない胡蝶先生ですらすずねのことを覚えていたのに…どうして俺だけ…俺だけが覚えいなかったんだろうか…」
 

/ 898ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp