第4章 騒音再び【音好きシリーズ】
そんな私の様子に少しも遠慮を見せなかった天元さんは、強引に私を音柱邸に住まわせた。これは後からわかった事なのだが、天元さんはお館様に"修行を見るついでで構わない。すずねをもう少しなんとかしてあげて欲しい"と頼まれていたらしい(雛鶴さんがこっそりと教えてくれた)。
「じゃああれだ。お前の弟弟子だって言う黄色い頭のうるさいやつ」
「善逸ですか?」
「そうそいつ。そいつがお前より背がデカくなって、今より男臭くなったらそいつの事怖くなんのか?」
「…なりません」
善逸は物凄くうるさいし、声は耳障りだけど、中身はとても優しくて実は頼れる面もある。
「だろう?他のやつも同じだ。相手をよく観察して理解しろ。お前のロクでもない父親と重ねてはじめっから相手を決めつけるんじゃねえ」
「…」
何も言えなかった。私は男はみんなあのクソ男と同じで、自分の欲望のためなら平気で女を囲い込み、抑制し、いらなくなったら捨てる。そんなものだと思っていた。けれども、天元さんと暮らし始めて、3人の奥さんを平等に愛し、大切にしている様子に自分の持っていた固定観念をことごとく覆された。
「煉獄はガタイが良くて声も派手にデカい。まさにお前が苦手とする人間だ。だが俺は、あいつの中身を知っている。あいつ程、馬鹿正直でいいやつはいない。だからまず、あいつに慣れろ」
天元さんの言いたいことはよくわかったし、確かに案としてはとてもいいように聞こえる。
「慣れろ…ですか…。ただでさえ多忙な柱を、まるで練習台のように扱って…いいものですかね?」
「どういうつもりか俺にもわからないが、煉獄はお前に興味があるらしい。今回の任務も、実のところお館様のご意向というよりも、あいつの希望らいしぜ?だからそこん所は心配いらねぇだろう」
炎柱様のご希望。どうして?
不思議で堪らなかった。
「んな顔で俺を見るな。気になるんなら明日、自分で直接聞け」
天元さんの顔をじっと見ていると、面倒くさいと言わんばかりの顔でそう言われてしまった。
「…わかりました。明日、炎柱様と任務に行ってきます。それで、今回の任務はどんな内容なんです?」
「地味に街に潜んでる鬼を探して欲しいんだと」
「…それって、別に私と一緒じゃなくてもよくないですか?」
パッと聞いた感じ、私が任務を共にする必要性を何一つ感じない。