第4章 騒音再び【音好きシリーズ】
「すずね、お前にお館様より特別任務だ」
「…え?またですか」
つい1週間前、全く同じことを言われ、拒否権もなく苦手とする炎柱様と任務に赴いたばかりではなかったろうか。
任務から戻り、雛鶴さんが作ってくれた美味しいおにぎりを頬張っていた私に告げられた天元さんからの"特別任務"の知らせに、嫌な予感しかしない。
思わず眉間にシワがよる。
「そんなあからさまに嫌な顔するんじゃねぇよ」
「だって…まさかまた炎柱様と一緒とか言わないですよね?」
「察しがいいじゃねぇか!その通りだ」
天元さんのその言葉に、私の眉間のシワはより深くなった。
「えらいブスになってるぜ」
「…元々なのでお気になさらず」
思い出されるのは1週間前に交わした炎柱様との会話。
"次に任務を共にし、無事終えた暁には食事に行こう"
次がこんなに早く訪れてしまうとは。これでは、"そんな約束した覚えが有りません"とは流石に言いづらい。
はぁ
と大きな溜息をついた私に
「そういやお前、この間なんで飯食って来なかった」
天元さんは目線を合わせながらそう問うた。
私はスッと目を逸らし、
「…行く必要がないと思ったからです」
ボソリと返事をする。
「お前な、煉獄から俺が"少しは慣れろ"って言ってたって聞いたよな?俺の命令に反くなんざ生意気なんだよ!」
「でも…」
「でももクソもねぇんだよ!次命令に反いたら、お館様に言ってお前を煉獄の継子にしてもらうからな」
「…っそれは嫌です!お願いですから…私を追い出さないで下さい」
思い出されるのは、最低限の荷物を風呂敷に包み、投げるように私に渡してきた父と継母の姿。
私が縋るように天元さんの顔を見上げると、じーっと探るように目を見つめられ
「ちょっとそこに座れ」
そう言って天元さんは縁側を指差した。
私はその指示に大人しく従い、たまに雛鶴さん、マキオさん、須磨さんと4人でおしゃべりをする縁側に座った。すると天元さんも私の隣にドカリと座る。
「お前、俺が怖いか?」
「いいえ。怖くありません」
「それはどうしてだ?俺はお前の嫌いな体格のいい男で、声も派手ないい男だ」
「…天元さんは…雛鶴さん、マキオさん、須磨さんをすごく大切にされています。だから…怖くありません」
もちろん最初は目を合わせるのも嫌なほど怖かった。