第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
だがしかし、彼女…しょうこさんは確かに自分が俺が探し求めていた女性だと、そう言っていた。それを疑うようなこと…俺には出来ない。いや、したくない。
しょうこさんとの食事はとても楽しい時間だった。よく笑い、よく食べて、可愛らしく甘えた仕草を見せる彼女は、きっと時間を共に過ごせば過ごすほど、その女性らしい魅力を感じることが出来るだろう。だがしかし、
夢の中の彼女は…もっと陽だまりのように温かく、穏やかではなかったか
そう思ってしまう。
いや。そんなことはない。彼女が嘘をつく筈ない。
「杏寿郎…どうしたの?」
そう言って心配気に視線を送ってくる彼女に
「いいや。何でもない。今日はもう遅い。家まで送ろう」
俺がそう言うと、
「え!?送ってくれるの?やったぁ!」
彼女は屈託のない笑顔を浮かべ、人目も憚らず、俺の腕にその豊満な胸をあえて押しつけるようにして絡みついた。
彼女は…こんな事をしない。
今度は、確かにそう思った。
それでも愚かな俺は、
育って来た環境に少しでも差があれば、昔とはほんの少し違った人格が形成されてもおかしくはない筈。
そんな風に思い、自分が感じた
"彼女は俺の探し求めていたあの女性じゃないかも知れない"
という気持ちから目を逸らし、懸命にしょうこさんのことを信じようとしていた。