第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
そんな言葉を、姿を見せられて、彼女が嘘をついていると、誰が思うことができるだろう。
仕事の途中だった俺は、彼女、しょうこさんと連絡先を交換し、
「後で必ず連絡する!」
そう伝え学校へと急ぎ戻った。
「随分とご機嫌じゃねえか!なんかいいことでもあったか?」
仕事を終え、荷物を纏めている俺に声を掛けて来たのは宇髄だった。
「あぁ!実は研修の帰りで、とうとう彼女を見つける事が出来た!」
「…っうぉいマジか!?柏木見つかったのか!?ってかお前いつの間にあいつの事思い出してたのか!?」
彼は俺のその言葉に、ひどく驚きながらもとても嬉しそうな顔をしてくれた。
「いや!実の所まだ思い出せてはいない」
「…は?なんだそれ?じゃあなんで柏木だってわかったんだよ」
「夢の中の彼女と、しょうこさんの後ろ姿は瓜二つだったからな!もしやと思い慌てて声をかけたところ、やはり彼女が俺の探し他人だったと言うわけだ!」
荷物をすべて詰め終わり、スマートフォンを確認すると、
"さっき会えた駅にもういるよ。早く来てね"
と彼女からの返事が来ていた。
よし、行こう。
そう思い、鞄に手をかけた時、
パシッ
と宇髄に手首を掴まれた。
「どうかしたか?」
不思議に思い、自分よりも少し上にある宇髄の顔を見上げると、
「…柏木の名前は…しょうこじゃねえ。お前が探してんのは、柏木すずねだろ。何度も…そう教えてやったじゃねえか」
眉間に皺を寄せ、俺の顔をじっと睨むように見ていた。
「それは理解している。だが必ずしも、同じ名で、この時代を生きているとは限らないはず。何より彼女が、自分がその探人だと言っていた。仮に君の話を信じるとすれば、彼女が嘘を付いていることになる。俺は彼女が嘘をつく人間だとは思っていない。彼女はそんな人間じゃない」
俺のその言葉に、宇髄の眉間の皺がさらに深くなる。
「もう行かねば。彼女が既に待っている。…その手を、離してくないだろうか?」
なぜそんな目で見られなくてはならないのか。
宇髄の考えが全く理解できない俺は、このまま話しをしていても時間の無駄だと思い、若干棘のある言い方かも知れないとは思いながらも宇髄にそう告げた。