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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】


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しょうこさんに声を掛けたのは
ほんの2週間前の出来事だった。




近くの大学で実施された講習会に学園の代表として参加した俺は、いつもの生活圏とは違う場所に来ていた。

講習を終え、駅へ向かう道すがらフと目に入った後ろ姿に、心臓がドクリと大きな音を立てた。


…あの後ろ姿は…っ!




昔からよく、夢を見ていた。

俺よりもだいぶ小柄な背丈。ぎっちりとキツくはないのだろうか?と思ってしまうほどにまとめ上げられた長く艶のある髪。華奢とは言えないが、肉付きがよく、抱き心地の良さそうな身体。


"杏寿郎さん"


その声も、温かくて柔らかな雰囲気も覚えているのに。その女性が、自分にとってどれほど大切な存在で、今度こそ幸せにしなくてはならないと言うこともわかっているのに。どうしてかその顔と名前が、出て来てくれなかった。

何故か最近、その女性の夢を毎日見るようになり、

もうすぐ彼女に会えるのかもしれない

そんな期待をしていた部分もあり、考える間も無く、その背中を追いかけ


「…っすみません!」


その腕を掴み


「…!?」


声を掛けていた。


突然腕を掴まれ、声を掛けられたことに彼女はとても驚いているようだったが、俺の顔を見ると目を見開き頬を赤く染めた。そんな彼女の反応に、俺の胸が更に大きな音を立てる。

たまらず俺は、


「…あなたは、俺がずっと探していた女性ではないですか!?俺のことを覚えてはいませんか!?遠い昔に俺と結婚の約束をしてはいませんでしたか!?」


彼女の両手をグッと掴み、じっとその目を見つめ、そんな事を聞いてしまっていた。


彼女は戸惑っているのか、視線を左右に揺らし何かを必死で考えているようだった。そんな反応に、


しまった…先走りすぎた


俺はようやく我に帰った。


「…すみません」


そう言いながら手を離した俺の手を、


「…っ!」


今度は彼女が掴み、


「…もちろん覚えています!あなたが探していたのは…間違いなく私です!私も…あなたを探していました!」


頬を真っ赤に染め上げ、声を震わせながらそう言った。


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