第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
「…凄い…昔とほとんど一緒だ…!」
千寿郎さんに連れられてやってきた現代の煉獄家は、もしやあのまま大正時代からワープしてきたんじゃないのか?と思ってしまうほどあの頃と変わらない様子だった。
「ビックリしますよね。中の作りもほとんど一緒なんですよ」
そう言って私の方を嬉しそうに振り返る千寿郎さんに、
「…凄く…懐かしい。…誘ってくれてありがとう」
私は自然とお礼を述べていた。
「お礼を言われることなんてありません。さ!中に入りましょう」
そう言って、千寿郎さんは私の左手をぱっと取り、厳かな門をあっという間に潜ると、玄関に手を掛ける。
ガラッと音を立て扉を開き
「ただいま戻りました!父上!父上はいらっしゃいますか!?」
千寿郎さんは帰宅の挨拶も早々に、家の中にいると思われる槇寿郎様を呼んだ。私はと言えば、心の準備も済んでいないままに、千寿郎さんが槇寿郎様を呼んでしまったので、ドキドキと大きな音を立てる心臓を落ち着かせようと必死だった。
「父上ー!父上ー!」
何度もそう言って槇寿郎様を呼ぶ千寿郎さんの声に、吸い寄せられるようにドスドスと廊下の奥から足音が聞こえ、それと一緒に
"そう何度も呼ばれずとも聞こえている!
と懐かしい槇寿郎様の声が聞こえてきた。
あぁ…凄く懐かしい。私、あの頃、この槇寿郎様の声に何度も助けられたんだ。
そんなことを考えていると、角を曲がってきた槇寿郎様の姿がようやく見え、
パッと
槇寿郎様の目と、私の目が合った。
槇寿郎様は、足が床にくっついてしまったかのようにピタッとその動きを止め、
「…すずね…か?」
槇寿郎様がまるで幽霊でも見たかのような顔をしながらそう言った。
私はキュッと口角をあげ、
「…はい。槇寿郎様。…お久しぶりです」
その昔と変わらないお姿に向かって微笑み掛けた。
すると、槇寿郎様は
え?走ってるの?
と聞きたくなってしまう程の早歩きでこちらへとやって来て、
「…っよく来た!」
私の肩にその両手を置き、酷く優しい笑みを浮かべながらそう言った。
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