第20章 神様の意地悪に抗う愛で【暖和if】
あげた視線の先にいたのは
「あぁ!?ガキが大人のやり取りにクビ突っ込むんじゃねぇよ!」
「あっち行け。お前みたいな奴に、関係ねぇだろ」
先程、彼女と消えていった姿とそっくりなそれを持ち
「いいえ。関係あります。その人は、兄の、そして僕の大切な人です」
「…千寿郎さん…」
スマートフォンを握りしめながら私のことをじっと見る千寿郎さんの姿だった。
「はぁ?今そんなん関係ねぇし、このお姉さんは俺たちと一緒に来たがってんの!ガキは引っ込んだろ!」
「そうだぜ?痛い目見たくなったらさっさと向こう行けよ」
そう言って、私を囲む2人の男は、千寿郎さんの存在を無視し、私を何処かへと連れて行こうとしていた。
そんな私達3人に向かい、
「…警察、呼びますよ?」
千寿郎さんがスマートフォンの画面を人差し指で差しながらそう言うと、
「…っはぁ!?別に俺ら、無理矢理こいつを連れて行こうとしてるわけじゃねぇし!」
「そうだ!"同意した上"で3人仲良くデートするために場所を移動するだけだ!」
そう慌てて言う男たちに、
「残念ながら僕にはそうは見えません。そもそもすずねさんはそんなにも泣いていますよね?そんな何の抵抗もできない女性を左右から挟んで囲っている姿、誰がどう見ても同意の元の行動とは取れないはずです」
少しも怯む様子を見せることなく、千寿郎さんが言い放った。
「…っなんだよ!行こうぜ!」
「邪魔しやがって…このチビガキが!」
そう捨て台詞を吐き、2人の男は私から離れて行った。そして、それと入れ替わるかのように、千寿郎さんが私へと駆け寄って来ると、"絶対に連れて行かせない"と言わんばかりの顔で、私とその男たちとの間に入ってくる。
"見てんじゃねぇよ!"と私たちの様子を、見せ物のように見ていた人たちに向かって言い放ちながら何処かへと去って行く2人の男を見送ると、
「…大丈夫…ですか?」
眉をこれでもかと言うほど下げ、心配そうに私を見つめる懐かしくて堪らない優しい瞳と目があった。
そんな私と千寿郎さんにに、興味あり気な視線を投げかけるギャラリーから逃げるため、
「場所を、変えましょう」
千寿郎さんは私の手をパッと取り、私の手を引いて何処かへと移動し始めた。