第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有
私はてっきり、"あの宇髄様"が選んだものだから、どぎついものが出てくるのだと思っていた。けれども目に入って来たのは、ぱっと見可愛らしく、普通のアイマスクとリストバンドに見える。
…なんで、そんなものを?
首を傾げる私に反して杏寿郎さんは、
「成る程…」
と納得したように言うと、真剣な目でその2つを見つめていた。
「杏寿郎さん…それ、なんなんですか?」
あれだけ人をおちょくり、不安にさせておいて、ただの雑貨とは思えない。
私がそう尋ねると、杏寿郎さんはじっと私を濃い欲を孕んだ目で見つめ、可愛らしいそれを手に持ち近づいてくる。
ギシリ
と音を立て杏寿郎さんが再びベッドに乗り、座っている私の正面にに胡座をかいて座る。
「杏寿郎…さん?」
そして
「目を瞑って欲しい」
私の問いに答える前に、求められるその杏寿郎さんからの要求に困惑してしまった私は、杏寿郎さんに求められた"目を瞑る"という行動を取ることができない。
…目を瞑るって…どうして?それとあの花柄、何か関係があるの?
そう思いながらじっと杏寿郎さんを見つめていると
「瞑るんだ」
杏寿郎さんが鼓膜を甘く揺らすような、低い声でそう言った。杏寿郎さんの口から紡がれたその言葉は、間違いなく"要求"ではなく"命令"に近いもので、何やら背筋が甘くゾクリとする。
「…っ…はい…」
その言葉に従い、私はようやく目を瞑る。
「いい子だ」
目を瞑ってその表情を伺うことはできないが、そう言った杏寿郎さんの顔は間違いなく情欲的な筈だ。
スッと杏寿郎さんの手が伸びて来た気配を感じ、目を開きたい欲求に駆られたがそれを我慢する。
「じっとしているように」
「…はい」
頭の方に気配を感じ、
杏寿郎さんは…何がしたいんだろう?
そう考えていると、フッと何かに目を覆われる。
「うむ。ピッタリだ」
そこまでされて
「…っ…これ…」
ようやく私は、あの花柄の可愛いアイマスクが、駄々のリラックス目的ではなく、行為の際に私の視界を奪うためのものだということに気がついた。
あんなに可愛らしい花柄で…こんなふうに使うものなの…!?
その辺の棚にポンと置かれてあっても、まさか行為の時に使われるものとは、おそらく普通は気がつかないだろう。