第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有
いつもならこんな風に乱暴に
ベッドに連れていかれたりしないのに。
いつもなら飲み会の後は
すぐにお風呂に入るのに。
いつもなら獲物を睨む猛禽類のような目で
私を見たりしないのに。
お酒って…怖い。
そう思ったものの、不思議とこの状況に恐怖心のようなものを抱くことはなかった。それよりもむしろ、普段お酒に酔わない杏寿郎さんが酔っぱらい、こんなにも自分を熱く求めてくれている事が嬉しいとすら思った。
そんな事を考えている私に、
「…んぅ…っ…ふっ…」
再び杏寿郎さんからの熱いキスが落とされる。
けれども今回はあっという間に杏寿郎さんの唇が離れて行き
え?…もう終わりなの…?
そんな事を思っていると、
「…宇髄からの誕生日プレゼント…使ってもいいだろうか?」
「…っ!」
杏寿郎さんが至近距離で私の目をじっと覗き込みながらそう尋ねてくる。
けれども、私はその質問にこたえられずにいた。なぜなら私は、その中身がなんなのかまだ聞かされていない。なかなか答えない私に、杏寿郎さんはその沈黙が"拒否"を示していると誤解したのか
「…ダメだろうか?」
と、眉を下げとても悲しそうな表情を見せる。その表情の、なんと可愛らしい事でしょう。私の胸、そして下腹部はキュンキュンと杏寿郎さんを求め騒ぎ出す。
プレゼントが一体なんなのかなんて…もうそんなのどうでも良い。
私は杏寿郎さんをじっと見つめ、
「…ダメじゃ…ない…です」
ボソリと呟く。
杏寿郎さんは、私のその答えを聞くと、
「そうか!」
と、先程までの猛獣のような目が幻だったかのように、少年のようなキラキラとした目に変わる(いやでもこれから行為をしようというのに少年のようなと言う表現はどう考えても相応しくない)。
杏寿郎さんはギシッと再び音を立てながらベッドから降りると、宇髄様からもらった紙袋から真っ赤な包装紙で綺麗に包まれた箱を取り出す。
中身は…なんなんだろう?
気になった私も、身体を起こし杏寿郎さんの手元を覗き込む。
ガサガサと音を立てながら包装紙を剥がし、中から出てきたショッキングピンクの箱を開けると、
「…花柄…?」
花柄の可愛らしいのアイマスクと、同じ柄のリストバンドのようなものが2つ入っていた。