第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有
エレベーターが開くと、足早に部屋へと急ぎ向かう。部屋の扉の前まで来ると、杏寿郎さんは私の手を離し、仕事の鞄へとその腕を突っ込んだ。
ゴソゴソゴソゴソ
「…むぅ!」
部屋の鍵が見つからないのか、焦ったような、苛立ったような杏寿郎さんの手をパシリと掴み、
「私が開けますから」
そう告げると、
「…すまない。焦ってしまい鍵が見つからない」
杏寿郎さんは、酔っ払って普段より赤くなっている頬をさらに赤く染めながらそう言った。
杏寿郎さん…可愛い。
そんな事を考えながら、鍵を鍵穴に差し込み
ガチャリ
と鍵を開ける。
するとすぐに、杏寿郎さんがドアノブを掴みグッと扉を開く。そのままなだれ込むように部屋へと引っ張られ、
ドサッ
音を立て杏寿郎さんが持っていた鞄と紙袋が床へと落ち、
「…っんぅ…ふっ…」
壁に身体を押し付けられ、
「…っ…すずね…」
先程エレベーターでされたキスとは比べ物にならないほどの激しいキスが私を襲った。
…ちゅる…じゅっ…
「…んぅ…ふっ…杏寿郎…っ…さん…」
話しかけようにも、杏寿郎さんは唇を離してくれず
こんなキス…食べられちゃいそう…!
まだ何も始まってすらいないのに、私は既に杏寿郎さんに溺れてしまいそうだった。
ちぅ
と音を立て、ようやくその長く濃厚なキスから解放される。
「…すずね…」
甘く、低い声が私の耳を犯し、
「…はい…」
「ベッドに行こう」
「…はい…」
杏寿郎さんの言葉に従う以外の選択肢はありはしなかった。
先程の濃厚すぎる口付けでふらつきながらもなんとかサンダルを脱ぎ、玄関に上がるや否や
「…っひゃ!」
鞄は玄関にそのまま置き去りに、紙袋だけ持った杏寿郎さんの腕に横抱きにされ寝室へと連れていかれる。私を横抱きにしたまま寝室の扉を開け、
ポイっ
と、普段の杏寿郎さんなら絶対にしない少し乱暴な手つきでベッドに放られる。
ギシッ
と私の体の重さで一度ベッドが大きく軋み、
ギシッ
杏寿郎さんが私に覆いかぶさった重さで、もう一度大きく軋んだ。