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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有


マンションに向かう道すがら、助手席の杏寿郎さんは紙袋の中を覗き込んだり、私にちょっかいを出したり(運転中だから悪戯したらダメですよ!とほんの少し怒ったら、叱られた大型犬みたいにしょぼくれてしまい非常に可愛かった)、ソワソワと落ち着かない様子だった。

そうは言っても、私自身もやはりその紙袋の中身が気になってしまい、


運転に集中しないと


と自分に言い聞かせるのに必死だった。

"宇髄様が奥様達と選んだ、私がいないと完成しない"と、そして不死川様が杏寿郎さんに"私に無理をさせるな"と言わせてしまうそのプレゼントの正体を気にするなと言う方が無理な話で、さらには気になるのと同時に


一体そのプレゼントで杏寿郎さんにどんなコトをされちゃうんだろう


と下腹部が期待してしまっている自分がいることを、感じざるを得なかった。


「早く部屋について欲しいものだ」


そうボソリと呟いた杏寿郎さんに


私もそう思います


と思わず返事をしてしまいそうになった。












駐車場に車を停め、車を降りると、居酒屋を出る時は私が杏寿郎さんの手を引くように歩いていたのにも関わらず、今は反対に杏寿郎さんに引っ張られていた。左手に鞄と例の紙袋を持ち、右手で私の手を引く杏寿郎さん。歩みはいつもよりも早く、エレベーターの前に着くと


「ボタンを押して欲しい」


となぜかやけに色気を含んだ声で言われてしまい


「…っはい」


と胸の高鳴りを抑えながら部屋のある階のボタンを押す。

程なくエレベータが到着し、扉が開き、中へと入る。"閉"のボタンを押し、ゆっくりと扉が全て閉まると、顎をクイッと掴まれ


ちぅぅ


「…っん」


杏寿郎さんに触れるだけと言うには些か濃厚なキスをされる。ただでさえ身体は何やらもう期待してしまっているのに、マンションのエレベーターの中でキスをされているという背徳感溢れるシチュエーションに、私の下腹部がジワリと熱を、そして水気を帯びていく。

杏寿郎さんの唇が離れていくと、


「…こんなにもこのエレベータが動くのが遅いと感じるのは初めてだ」


「…はい」


再び耳に届く杏寿郎さんの艶っぽい呟きで、まだ何も始まってすらいないのに、私の脳はすでに蕩け出してしまいそうだった。


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