第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有
そんな私の様子に宇髄様は
「まぁお前の為にも、今はあんまほじくらない事を薦めておくぜ」
ニヤニヤとなんだかいやらしい笑みを浮かべながらそう言った。
私だって大人だ。そしてどちらかと言えば観察力には優れていると自負している。だからこそ、宇髄様が杏寿郎さんに"吹き込んだ"と言うその内容が"夜のコト"に関するというのは何となく察しがついてしまった。
…なんだか、遊ばれているようで悔しい。
そう思いながらジトリと宇髄様を見ていると、ズシッと右肩に杏寿郎さんの重みを感じ、
「何やら俺でなく、宇髄の事を熱心に見ているようだが…」
不満げな声で、可愛い台詞を杏寿郎さんがのたまう。
その行動と言葉に胸をくすぐられ
「そんなことありませんよ?私は杏寿郎さんしか見ていませんし、杏寿郎さんにしか興味もありません」
私は、元柱の皆さんの前にも関わらず、杏寿郎さんの頭に手を伸ばし、その毛量のある髪を優しく撫でた。
そんな私と杏寿郎さんの様子に
「俺は何を見せられている。イチャつくなら家に帰ってからやれ。この場に甘露寺がいたら叩き切ってやるところだ」
伊黒様は不機嫌さを全く隠す様子もなくそう言い、鋭い目でこちらを睨みつけている。
「伊黒はまだ刀を持ち歩いているのか?」
「黙れ冨岡今すぐその口を閉じろ」
冨岡様は…相変わらず冨岡様だった。
「すみません、つい杏寿郎さんが…可愛くて」
酔っ払って、擦り寄って来て、可愛い嫉妬をしてくれる。そんな愛する夫を前にすれば、普段の
人様の前でイチャイチャとくっつくなんて有り得ない!
と思っている自分なんて、どこか遠くに飛んでいってしまったのだから仕方がない。
「杏寿郎さん。そろそろお店の迷惑になってしまいますし帰りましょうか」
そう言いながら私は再び杏寿郎さんの頭を優しく撫でる。杏寿郎さんは、私の肩口に埋めていた顔をパッとあげ、いつもと違うフニャリとした笑顔を浮かべ、
「そうだな!帰って宇髄からもらったプレゼントを早速使わなければなるまい」
そう言った。
「…っ馬鹿やろうがァ!んなこと今ここで言うんじゃねェ!」
杏寿郎さんのその言葉に、不死川様が額に青筋を浮かべ、心なしか頬を染めている。
うん。きっとろくなプレゼントじゃない。
そう確信した私は、再び宇髄様をジトリと見た。